訃報:ホルヘ・エドワーズ、『ペルソナ・ノン・グラータ』著者 | MARYSOL のキューバ映画修行

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チリの作家、ホルヘ・エドワーズが17日、マドリッドで亡くなりました。享年91歳。

謹んでお悔やみ申し上げます。

   

 

エドワーズといえば「ペルソナ・ノン・グラータ/カストロにキューバを追われたチリ人作家」が有名。

私も先月〈パディージャの自己批判映像〉が公開されたことや、その映像が使われているドキュメンタリーの紹介を機に改めて読み返したばかりでした。

   

 

とはいえ、彼は1994年にチリ文学賞、その5年後にセルバンテス賞を受賞しているくらいですから、他に多くの優れた著書があるわけで、チリの国民的詩人、パブロ・ネルーダとの親交から生まれた著書などもよく知られているようです。

 

2人の出会いは、キューバ赴任前のパリの大使館時代(アジェンデ政権下)で、ネルーダが大使、エドワーズは参事官だったとき。

その後、エドワーズは1970年12月から翌年3月22日まで、在キューバ・チリ代理公使としてハバナで4カ月弱暮らします。その間にパディージャを始めとする、体制を批判的に論じる作家たちとの付き合いや、キューバ経済に関する報告書が〈ペルソナ・ノン・グラータ(外交上好ましからざる人物)〉と見なされる要因になり、追放。

再びパリのネルーダ大使の下で参事官職に復帰します。

 

が、1973年9月11日、アジェンデ政権がクーデターで崩壊。その時「ペルソナ~」の出版のためカタルーニャにいたエドワーズは亡命者に転じます。

 

その1カ月後に「ペルソナ~」の初版が刊行されるも、キューバ革命を批判したエドワーズは孤立。再び作家として評価されるには、ソ連・東欧の社会主義圏崩壊を待たねばなりませんでした。

 

しかし、彼は「ペルソナ~」のエピローグで次のように書いています。

本書執筆の第二の動機は、迫害と挑発の対象となり、あらゆる種類の拒否と検閲に晒され、あるいは亡命を余儀なくされたキューバ人作家たち― ホセ・レサマ=リマ、エベルト・パディージャ、ビルヒリオ・ピニェラ、ギジェルモ・カブレラ=インファンテ、その他大勢の人々― 彼らに対する心からの連帯感、私の心を揺さぶり、私という人物を根底から変えた親愛の情である。というわけで、私はここに何のためらいもなく宣言しよう。彼らのために骨を折ったことを私は一生後悔しない。そして、死が訪れるその日まで、彼らのために骨を折るのをやめることはないだろう。訳=松本健二

 

Marysolより

パベル・ジロー監督のドキュメンタリー『パディージャ事件』(未見)には、問題の詩集の一篇「難局に当たって」が引用されているそうで、その詩の邦訳が「ペルソナ~」の〈訳者解説〉で読めます! ちなみに私は訳出されているもう一遍の詩「退場」に共感します。

ぜひ、ご一読ください。