〈フライドエッグの柄〉をめぐる質問と回答 | MARYSOL のキューバ映画修行

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【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

先日ここで30年前の問題作『不思議の村のアリシア』を紹介し、〈鑑賞のヒント&注目ポイント〉をいくつか挙げたなかで、〈《フライドエッグの柄》の意味は解明中〉と書きました。 

   写真右上は〈フライドエッグ柄〉のワンピース

       フライドエッグ柄のタオル


その後、近所に住む〈キューバ映画のアミーガ〉(キューバ在住経験のあるスペイン人)と、本作についてメチャ楽しく語り合い、〈フライドエッグ〉の意味についても論じ合ったのですが、どうしても分からないので、脚本を書いたエドゥアルド・デル・リャノにメールで質問をしました。

というのも、友人は、彼が最新作の製作に当たり募ったクラウド・ファンディングの出資者で、彼女の窓口になっている私の元には、進捗状況を伝えるメールが届いたばかりだったうえ、本人と連絡が取れるようになっていたからです。
ダメで元々と、昨日メールしたら、今朝には返事が届いてました。早い!

ちなみに、質問は同じメールにそれぞれ自分の言葉で書きました。
私の質問はー

デル・リャノ様
私は『低開発の記憶』に興味をもって以来、日本語でキューバ映画のブログを書いています。
今年は『不思議の国のアリシア』の公開30周年に当たると知り、ブログで紹介しようと思い、映画を見直しました(初めて見たのは約15年前、ハバナでビデオで見ました)。すると、この映画がいかに面白く、機知に富んでいるか、ようやく分かりました。

幸い私にはXXというスペイン人の隣人がいて、英語字幕では伝わらないことを教えてくれます。
そして、彼女が上に書いたように、私たちは「フライドエッグ」が何を意味するか知りたいと思っています。
映画では、サナトリウムの所長が「フライドエッグにすると、卵の特性が失われてしまう」と言っているので、フライドエッグ模様を身につけた人は、〈所長から見て特性を失った人〉を表しているのでしょうか?
けれども、ラスト近くの騒動のシーンでは、所長自身もフライドエッグのシャツを着ています。
ということは、単に〈不思議の村〉の象徴ですか?

15年前にこの映画を見たときは、ラスト(=ファースト)シーンの怖さが印象に残りましたが、巧妙に関連し合うディテールの数々を理解していませんでした。
けれども、今回この映画を見て、今も非常に有効な作品だと思います。なぜなら、残念なことに、世界中で権威主義が広がっているからです。

   
★エドゥアルド・デル・リャノからの返信:
え~、現実は君たちの解釈よりもおもしろい。
衣装をデザインした時点では、フライドエッグではなく...花、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」のオリジナル・イラストに出てくる花、だったんだ。
ところが、キューバの出来損ないの繊維産業が粗雑に作ったせいで、弾けた(restallante)黄色と相まって、フライドエッグに見えてしまったというわけだ。
監督のダニエルは、それを見て、こっちの方が良いと決めたんだ。
興味をもってくれて、ありがとう。 
E.


というわけでした。
ところで、このフライドエッグ柄のシャツは、なぜか人気を博し、別の監督の映画、『Ponte tu pensamiento en mí』にも登場するそうです。


教訓:キューバ映画は、考え過ぎてはいけない。