GLORIA ETERNA (仮:永遠の栄光)/ジミ・ラミレス監督/2017年 | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

前回紹介した映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は、1930年代に実在した〈ディストピア〉と

その<偽りのユートピア>の実像を暴いた勇気ある記者の話で、現代への切実な教訓になっていました。


今回紹介するキューバの短編は、全くのフィクションで、映画学校の生徒(1983年生まれ)の作品ですが、キューバ映画らしい象徴的表現に満ちていて、解読する面白さがあるうえ、そこから得られる教訓は、「赤い闇」同様、今の日本人にとって他人事ではない!

尚、すでにこちらで触れましたが、2018年度 Muestra Joven(若手監督作品上映会)のベスト作品(短編フィクション部門)。



Gloria Eterna(仮:永遠の栄光)/ジミ・ラミレス監督/13分/2017年
出演:マリオ・ゲラ(フリアン)、妻アイデー(リン・クルス)

 

トレーラー


ストーリー
フリアン(ホセ・マルティの本名=ホセ・フリアンにちなむ?)は模範的労働者として最も栄誉ある賞を授与されることになった。だがフリアンは、深刻なジレンマに陥る。なぜなら、彼には生まれてくる子供に泳ぎを教えてあげたいという夢(自身のトラウマに由来)があったのに、受賞は己の死を意味していたからだ・・・・・・。
★本編はVIMEOで観られます。

見どころ
シンボリズムに富む作品:主人公フリアンや肖像は何を象徴しているか?

解読のヒント(ウェブ上コメントから) 
・フリアンは、全体主義的組織の中で正当性が不明なまま神格化される存在。
・遍在する(角ばった)像は、空虚な権力の象徴
・画一的な肖像は、個の消滅、ダイナミズムの消滅を意味している。
・登場人物たちは従順な羊の群れのよう (形式主義・変化の無い社会の産物)。
・逆説的連鎖:自己犠牲(家族のため)→死→不滅化(空疎な栄光)
・エンディング・クレジット:紙幣に見る通貨の単位で Estatua(エスタトゥア=肖像)の方が Hombre(オンブレ=人間)より価値がある(権力が個に優る)。

その他の意見
・ジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」を彷彿させる。

・官僚主義を批判した映画『ある官僚の死』(トマスG.アレア監督/1966年)を思い出させるが、本作の主人公はもう抵抗しようともしない。
・正体を現さないまま正当性を主張し、一方的に指令を下す<権力>に対し、芸術は論争を挑む義務がある。

 

Marysolよりひと言

「われ反抗(抵抗)す。ゆえにわれら(映画)あり」。

この反抗(抵抗・異論)の精神こそ、キューバ映画(創立時のICAIC)の革命的精神(ダイナミズム)だと私は思う。

そして、今その精神は、ICAICという半世紀以上を経た組織よりも、自主製作映画が反映している。