キューバ映画の研究家、J.A.G.ボレロ氏が初めて『キューバの恋人』を見たのは、キューバではなくスペインはグラナダ。2009年度のグラナダ映画祭で「キューバ革命50周年」を記念し、1959年から69年の間に外国人によって撮られたキューバ革命の映画を特集上映したときでした。
そのときのオフィシャルサイト を参照しつつ、作品を年代順に並べ替えて(便宜上番号を付け)以下に紹介します。
尚、内容の記述は、私的メモのため忠実な訳ではありません。
スペイン語タイトル(原題)
(仮)邦題
監督/ 製作国/ 製作年/ 上映素材/ モノクロまたはカラー/ 上映時間
内容
1.Cuban Rebel Girls (Cuban Rebel Girls)
キューバの女性反乱軍兵士
バリー・メイホン/ 米国/ 1959/ DVD/ モノクロ/ 68分
エロール・フリン演じるアメリカ人記者は、フィデルを支持しバティスタ打倒に協力する。その過程で出会った女性反乱軍兵士のエピソードを中心とするフィクション。
2.Cuban Story (The Truth about Fidel Castro Revolution)
カストロの革命の真実
ビクトル・パーレン/ 米国/ 1959/ DVD/ モノクロ/ 50分
50年代エロール・フリンとビクトル・パーレンは定期的にキューバを訪れていた。時代の証人だった二人は当時を題材にドキュメンタリーを製作。フィデルの理想主義とエネルギーに感化されたフリンは、そこに個人的な解釈を加えた。だが、当時の状況により、同作品は40年以上忘れられた存在だった。
拙ブログ関連記事:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10096086261.html
3.Gente en la playa (Gente en la playa)
浜辺の人々
ネストール・アルメンドロス/ キューバ/ 1960/ デジタルベータカム/ モノクロ/ 10分
革命によって国民に解放されたビーチで過ごす人々をフリーシネマの手法で撮影。自然光による明暗のコントラストが印象的。だが、ICAICの許可なく撮影したため上映禁止となる。
拙ブログ参考記事:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10110174931.html
4.Tierra olvidada (Tierra olvidada)
忘れられた土地
オスカー・トーレス/ キューバ/ 1960/ 35mm/ モノクロ/ 21分
監督はドミニカ出身でICAICに参加。
何世代にも渡ってシエナガ・デ・ラ・サパタで苦しい生活をしてきた人々の状況を改善するプロジェクトを扱ったドキュメンタリー。数々の国際的な賞を受賞した。
5.Cuba, pueblo armado (Cuba, pueblo armado)
キューバ、武装した人民
ヨリス・イヴェンス/ キューバ=フランス/ 1961/ 35mm/ モノクロ/ 43分
キューバ各地に散らばった民兵の姿を追ったドキュメンタリー。
特に山間部における反革命派との対立に照準を当てている。
ICAICの人材育成のため滞在したヨリス・イベンスのキューバを巡る旅の成果。
6.El joven rebelde (The Young Rebel)
若き反乱軍兵士
フリオ・ガルシア・エスピノサ/ キューバ/ 1961/ 35mm/ モノクロ/ 83分
脚本:チェーザレ・ザバッティーニ
一人の農村の少年が、革命兵士として成長していく姿を描く。
拙ブログでも紹介:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10719276307.html
7.Yanqui, No!(Yanqui,No!)
ヤンキー、ノー!
リチャード・リーコック
/ 米国/ 1960/ 16mm/ モノクロ/ 55分
キューバが米州機構から追放されると、ベネズエラでデモが起きた。一方キューバではフィデルが国民に向けて演説で訴えかけた。何人かの重要人物を通して、ラテンアメリカにおける反米感情を具体的に示した作品。
7.Cuba 58 (Cuba 58)
1958年のキューバ
ホセ・ミゲル・ガルシア・アスコット/ キューバ/ 1962/ 35mm/ モノクロ/ 49分
アスコット監督はスペイン出身だが内戦によりメキシコに亡命。
ICAIC人材育成のためキューバに滞在。
本作は3篇のエピソード(「Un día de trabajo(ある警官の一日)」「Los Novios(恋人たち)」「Año Nuevo(新年)」)から成るオムニバス映画だが、当初は「レボルシオン 革命の物語」
(T.G.アレア/ 1960)に組み込まれる予定だった。
8.Isla en llamas (Pylayushchiy ostrov)
炎の島
Roman Karmen/ ロシア/1962/ デジタルベータカム/ モノクロ/ 75分
CIAによるプラヤ・ヒロン侵攻事件の失敗
9.Patria o muerte (Patria o muerte)
祖国か死か
Jerzy Hoffman, Edward Skórzewski/ ポーランド/ 1962/ 35mm/ モノクロ
キューバ革命をテーマにしたドキュメンタリー
10. We shall Return (We shall Return)
我々は戻るぞ
フィリップS.グッドマン/ 米国/ 1962/ DVD/ モノクロ/ 92分
政治ドラマ。ある地主一家がカストロ政権を嫌い、マイアミに亡命する。ところがそこで再会した長男は熱烈なフィデル支持派で、ヒロン(ピッグス)湾侵攻事件を失敗させようと画策していた。父は、長男の裏切りを阻止しようと極端な手段を講じる。
11.Para quién baila La Habana (Komu tancí Havana)
誰が為にハバナは踊る
ウラジミール・チェフ/ キューバ=チェコスロバキア/ 1963/ 35mm/ モノクロ/ 78分
エドアルドは3年ぶりに釈放されてハバナに帰るが、愛するラウラは親友の男に移り気をしていた。
男はかつてエドアルドの命の恩人だったが、その家は革命後に財産を没収され、亡命を試みていた。
ラウラがカーニバルに出演中、彼の一家は船に乗るが、追っ手に捕えられてしまう。
(チェコ・ポスター展の解説より)
12.Palmas cubanas(Palmas cubanas)
椰子の木
ロシーナ・プラド/ キューバ/ 1963/ モノクロ/ デジタル・ベータカム/ 26分
ある売春婦が、出会った男を通して革命社会の善意に触れ、人生が変わっていく。
13.El otro Cristóbal (El otro Cristóbal)
もうひとりのクリストバル
アルマンド・ガッティ/ フランス=キューバ/ 1963/ 35mm/ モノクロ/ 115分
ラテンアメリカのある架空の国が舞台。主な登場人物は、統治者のアナスタシオ提督、外国人水夫のクリストバル、そして革命を活性化するためにはオルガンの音楽が重要と信じて疑わない黒人農夫。クリストバルと黒人農夫は、コンガのリズムで暴君を倒す社会運動の推進者となる。シンボリックでシュールな風刺劇。
14.Ella(Ella)
彼女
テオドール・クリステンセン/ キューバ/ 1963/ 35mm/ モノクロ/ 115分
§山形国際ドキュメンタリー映画祭2011の別冊プログラムによると:
1964年製作・ビデオ上映/ 撮影:ホルヘ・エレラ、音楽:エラ・オファリル
デンマーク人であるクリステンセンが、キューバ革命後の女性たちの姿を追う。
民兵への参加に取り込まれていくと同時に、それぞれに彼女たちは異なる現代キューバの生活を営む。
15.Crónica cubana (Crónica cubana)
キューバの年代記
ウーゴ・ウリベ/ キューバ/ 1963/ 35mm/ モノクロ/ 123分
新たな社会建設がもたらす変化を問う年代記。
新政府が各人生に及ぼす意味をめぐって人々は態度の明確化を迫られる。
16.Preludio 11 (Prelude 11)
プレリュード作戦
Kurt Maetzig/ キューバ=東ドイツ/ 1963/ デジタルベータカム/ モノクロ/ 92分
あるアメリカ人官吏が、反革命グループと協力してキューバ侵攻作戦を企む。作戦名は「プレリュード」。若い女性民兵ダミエラは、愛を選ぶべきか大義を選ぶべきか苦悩する。
17.Salut les cubains (Salut les cubains)
キューバのみなさん、こんにちは
アニエス・ヴァルダ/ フランス=キューバ/ 1963/ 35mm/ モノクロ/ 30分
山形国際ドキュメンタリー映画祭2011の別冊プログラムによると:
ヴァルダが1962年にキューバを訪れた際に撮影したモノクロのスチール写真1800枚を編集した。
文化、ファッション、風俗、そして革命の英雄、歴史、改革などをユーモラスに紹介しながら、成功に沸き立つ若い社会主義国の希望と興奮を伝える。
アシスタントに付いた若いサラ・ゴメスが最後にチャチャチャを踊っている。
18.Soy Cuba(I am Cuba)
怒りのキューバ
ミハイル・カラトーゾフ/ キューバ=ソ連/ 1964/ 35mm/ モノクロ/ 141分
4つのエピソード(4つの視点)通して、バティスタ政権時代から革命までを描く。
政治的従属状況から開放され、独自のアイデンティティの確立をめざす道程を矛盾と希望を交えて描いている。
DVDあり。
拙ブログ紹介記事:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10942533426.html
19.Oro de Cuba(Oro de Cuba)
キューバの金
アレハンドロ・サデルマン/ キューバ/ 1965/ 35mm/ モノクロ/ 47分
監督はアルゼンチン出身。アメリカ大陸発見に始まり、砂糖黍刈り”ヒーロー”のレイナルド・カストロまで、砂糖産業の振興(アフリカ人奴隷→中国人労働者→機械化)を通しキューバが発展する様子を描く。
20. ¿Qué es lo bello? (¿Qué es lo bello?)
美しいのは何?
ロシーナ・プラド/ キューバ/ 1965/ デジタル・ベータカム/ モノクロ/ 10分
トリニダーの町を舞台に、古くからの習慣と新しい社会的行動を対比する短編。
21.The life of Juanita Castro(The life of Juanita Castro)
ファニータ・カストロ(米国に亡命したフィデルの妹)の人生
Andy Warhol/ 米国/ 1965/ 16mm/ 66分
シナリオを書いたロナルド・トラベルが、雑誌「ライフ」に掲載されたフィデルの妹、ファニータの記事「裏切り者の兄は出て行け」(1964年)にインスピレーションを得て製作。
ラテンアメリカの政治に対する前衛的で破壊的な風刺作で、女性がフィデル・カストロを演じている。監督はアンディ・ウォーホル!
22. Pepe Trinchera (Pepe Trinchera)
ペペ・トリンチェーラ
Harry Reade(ハリー・リード?)/ キューバ/ 1968/ カラー/ 10分
アニメーション。オーストラリア出身のハリー・リードが生んだ、キューバで有名なアニメのキャラクター、ぺぺのシリーズの一編。
国民に対し塹壕(トリンチェーラ)を掘るなど、空爆から身を守る術を示す。
23.Fidel! (Fidel!)
フィデル!
ソウル・ランダウ/ 米国/ 1969/ 35mm/ モノクロ/ 95分
革命に先立つこと約10年前からの政治現象に対するパーソナル・ポートレイト。キューバ国民とそのリーダーの日常を写した稀有な映画。
集団農場の農民たちの不平を聞くにせよ、庶民と野球を興じるにせよ、マルクス主義革命の実践にせよ、どのシーンにもフィデルのカリスマ性が現出している。
好き嫌いの差はあれ、“巨人”と呼ばれる理由が納得される。
24.Che! (Che!)
チェ!
リチャード・フライシャー/ 米国/ 1969/ 16mm/ color/96分
チェ・ゲバラとフィデル・カストロの出会いから別れまでをアメリカ人監督の視点で描く。
ケネディの大統領就任からピッグス湾侵攻事件もカバー。
DVDあり。「革命戦士ゲバラ!」
25.La novia de Cuba(Kyuba no koibito)
キューバの恋人
黒木和雄/ 日本=キューバ/ 1969/ 35mm/ モノクロ/ 101分
キューバに上陸したある日本人船員はキューバに浸りきりたいと望む。そんな彼が街で出会った女性に一目ぼれし、二人は恋に落ちる。彼女は彼にフィデル以前の時代、バティスタのせいで家族を失ったことを語る。そして革命への献身が彼への愛より大きく成長したとき、彼女は彼を置いて去っていく。本作には、チェ・ゲバラを偶像化し革命を南アメリカ全土に広げようと呼びかけるフィデルのアーカイブ映像が出てくる。(サイト紹介文より)
拙ブログ紹介記事:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10957472887.html
26. Topaz (Topaz)
トパーズ
アルフレッド・ヒッチコック/ 米国/ 1969/ フォーマット/ カラー/ 143分
米国への亡命を望むソ連の役人から、キューバにミサイル基地が建設中であることを知らされたアメリカ人の秘密工作員。情報源はフランスと知り、彼のフランス人の友人はキューバに赴く。
DVD あり。