ラテンアメリカの注目の監督 | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

第5回スペイン・ラテンアメリカ映画祭
東京では先週木曜日(11日)から始まりました。
年々ゲストを迎えQ&Aの機会も増え、スペイン語圏の映画を深く知る絶好のチャンス。

きょうは私が観た作品とその後で行われたQ&Aのなかで印象に残ったこと

特に将来が期待される監督3人に焦点を当てました。
各作品の詳細については、映画祭の公式サイトを参照してください。
http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/
また、これから映画を観る予定の方は、鑑賞後にお読みください。

静かな光 『静かな光』(メキシコ)
長回しで140分。しかもメキシコの中でも別世界のような宗教的コミュニティ(メノナイト)の話というので(原作があるらしい)、正直「寝ちゃうかも…」と思ったのですが、ストーリーに緊張感があったし、珍しい暮らしぶりや、まるでメキシコっぽくないチワワ州の風景、美しく厳しい自然が、研ぎ澄まされた映像感覚でスクリーンに映し出され、「これぞ映画ならではの体験」と満足。


ゲストは主演俳優のコルネリオさん。ご本人もこのコミュニティで生まれ育った方で、どうりでスペイン語がちょっと外国人ぽい。彼等の話す言葉は、オランダ語の方言に様々な言語がミックスされたもので、映画の中では英語も聞こえたりしました。
プロの俳優さんではないため「質問は短く、簡単にお願いします」とやや緊張気味でしたが、様々な質問に落ち着いてきちんと答えてくれました。
「今も映画のような生活をしているのですか?現代文明に汚染されることはないのですか?」という質問には、「残念ながら“汚染”されていて、その影響から逃れようと南のカンペチェやボリビア(と言ってた)に移住する人たちもいる」と。


会場にいたメキシコ人の「コミュニティの存在は生産される農作物や酪農製品で知っていたけど、映画を観て初めてどんな暮らしをしているのか知りました。ありがとう」というコメントが印象的。


監督のカルロス・レイガダス1971年メキシコ生まれ。
カルロス・レイガルダ監督 法律畑出身という経歴の持ち主で、デビュー作のタイトルは「ニホン」(2002年)だけど、内容は日本と関係ないみたい。

彼の映画はどれも"タフ”と言ってたけど、『静かな光』はどうかなぁ。個性的だとは思うけど。いずれにせよ、これから注目の一人。


『頭のない女』(アルゼンチン
今年のカンヌ出品作ということで、ちょっと注目してたけれど、そもそも私はこの監督の作品は苦手。

前作の『La Cienaga(沼地)』も相性悪かったし…
当日は4本制覇する日だったので、「寝るとしたらこの映画」と腹を決め、上映前に腹ごなし。

案の定うたた寝してしまいました。


Q&Aに登場したのは、プロデューサーのベロニカさん。
彼女のコメントが面白く、おかげでようやくルクレシア・マルティル監督の映画が意図していることが理解できました。
「ルクレシアはこれまで『La Cienaga』『La niña santa』と、アルゼンチン北部の町サルタを舞台に映画を作っており、これで三部作が完成。

『頭のない女』というタイトルは「何が起きたのか自分で認識できないうえ、周りも隠蔽するから益々分からない」ことを暗示。
「軍事政権時代を下敷きにしながらも、普遍的にサルタ(監督自身の出身地)の比較的裕福なソサエティ、保守的で“社会的に正しい”(だが実は“偽善的”な)社会を描いている」。
軍事政権下では「死体がないなら、殺人もない」と言われたとか。日本で言うなら「臭いものに蓋」「知らぬが仏」?
「ルクレシアの表現は、断片的で非説明的。明暗や音で暗示したりする」。
なるほど。なんだか彼女の作品を観るのが楽しみになってきました。

今度は寝ないぞ。


ルクレシア・マルティル、1966年生まれ。ルクレシア・マルテル監督
1990年代後半に始まった“新アルゼンチン映画”を代表する、ラジカルな監督。

低予算で質の高い映画を目指し、従来とは違った視点で現実を描くのが特徴だとベロニカさんが解説してくれました。
ほかに同ムーブメントの監督で日本で知られているのは:
一昨年のラテンビートで上映された『ボディガード(Custodio)』のロドリーゴ・モレーノ、

コメディ路線のダニエル・ブルマン監督など。
昨年の話題作『XXY』のルシア・プエンソはさらに新しい世代に入る。


トニー・マネロ 『トニー・マネロ』(チリ)
軍事政権下の不気味で暴力的な雰囲気がジワジワと観る者を金縛りにしていく、コワイ映画。

登場人物は、みな尊厳を奪われ、みじめに這い回るゴキブリのようだ。
妄執と嫉妬に蝕まれた、エゴイスティックな主人公を演じたアルフレド・カストロ氏。
6時間前に着いたばかりの成田から、Q&Aに駆けつけてくれました。
スクリーンで観るよりずっとソフトで洗練された雰囲気の持ち主。
主な活躍の場は舞台だそうで、映画は2本目とのこと。


カストロ氏いわく「サタデー・ナイトフィーバーの主人公トニー・マネロは、アメリカ映画ばかり上映された軍事政権下チリの“憧れ”を表している。映画は賛否両論だった。チリにはまだ現実を直視できない人々がいるのだ」
パブロ・ラライン監督 「パブロ・ラライン監督はまだ若いが、才能豊かで、従来とは違う視点から歴史を描いている」
なんだか前述のアルゼンチン作品と共通点を感じますね。
ラライン監督といえば、前作『Fuga』(2005年)は

ハバナ映画祭で大好評でした。

(見逃してしまい、残念) 監督:パブロ・ラライン 1976年生まれ