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☆私の本棚☆
読んだ本について思うところを書いています。あくまでも個人の感想です。
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空海に関する本の中で、もっとも読まれているのは、この本ではないだろうか。
司馬遼太郎著『空海の風景』。
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司馬遼太郎先生の著作は、男性にはよく読まれているようで、私の周りでも、愛読書に司馬先生の本のいずれかを挙げる男性は多いが、私は全く興味が持てず、本書が初めて読んだ司馬先生の著書であり、この先も本書以外で読むつもりはない。
何故だろうか。
好みに合わない、としかいいようがない。
私がNHKの大河ドラマを見ないのと同じ理由かもしれない。
私は「歴史」を学ぶことは好きだが「歴史物語」は好きではないのだ。
そんな私が、この本を読もうと思ったのは、もちろん空海が主人公であるからということもあるが、「これは読まねば!」と思ったきっかけがある。
空海ナビゲーションサイト「エンサイクロペディア空海」で、宮坂宥洪先生の「司馬遼太郎の『空海の風景』に異議あり」を読んだときのことである。
『空海の風景』が純然たるフィクションであるならば、何を書こうが、そこは作家の創造の世界であるが、『空海の風景』は、むしろ、伝記、あるいは、評伝として読まれているきらいがある。
それなのに。いや、そうであるならば。
こんなのほんとの空海じゃない!
そこが宮坂先生の問題意識のようである。
司馬遼太郎は国民的作家であり(私は読んだことないが)、本書もいまだに多くの人に読まれており、評価も高い。
一方、異議を唱える宮坂宥洪先生も、お父上の宥勝先生と二代にわたる真言宗の僧侶にして著名な仏教学者である。
どっちに転んでも面白いに決まっている!
そんなわけで、『空海の風景』読んでみた。
正直、この作品は小説として書かれようとしたものであろうが、視点が誰のものなのか定まらず、小説として体をなしているように思えない。
それだけ、空海を題材に説得力のある歴史小説を書くことは難しいのだ。
人物や歴史的背景の設定だけを借りて空想の物語を書く分には、これほどインスピレーションが湧く人物はいないだろうが。
歴史小説と空想小説との境目とは何か、ということはおいておく。
司馬遼太郎先生は、この作品では、かなり多様な読者(真言宗関係者も当然含まれる)を想定して、気を遣った書きぶりをしているようだ。
「空海は・・・と言ったように思える。」
「この空海は・・・と言わねばならない。」
などの言い回しが多用され、作者の想像の部分に関しては、それと分かるように書かれているのである。
気を遣ったが、やはり異議を唱える人はいる。
それも司馬先生には想定内であろう。
私自身が読んでも「いや、それはないだろう」と思った点が多々ある。
理趣経が頭から離れないのか、やたらと性欲の話をする。
「かれが常人よりもさらに巨大な肉欲のもちぬしとして生れついているらしいということは 、偉大な思想家にしばしばそれが見られるということで 、かすかに想像できる 。」
って、論拠が意味不明だ。
それに、「かれはついには性欲を逆に絶対肯定し 、それを変質昇華させる方法としての大日経の世界というものをも 、からだ中の粘膜が戦慄するような実感とともに感知したにちがいない 。」なんて、これはあんまりだ。
細かいことは、宮坂宥洪先生のページにお譲りするが、大日経の世界が性欲を変質昇華させる方法だとは。
真言宗のお坊さんは、もっと怒ってよい。
もちろん純然たる小説の中なら空海が性欲で悩もうが、痔で苦しもうが、一向に構わない。
百歩譲って、仮に、そんなことも若き日の空海にあったとして。
大日経と結びつけるか?
では、こんなけしからん本は、この世から抹殺してよいかというと、そんなことは全くない。
宮坂先生も、司馬先生の作家としての力量はご存知で、本作もよく文献を調べているとして評価している。
ただ、歪んだ解釈に問題があるということなのだ。
とかくこのような論争が不毛になるのは、相手の人格にまで攻撃がおよびがちだからであるが、宮坂先生は司馬先生自体を攻撃することなく、粛々と本の内容について異議を唱えている。
議論は不毛になりがちだし、たかが小説一つに目くじら立てるのも大人げない、と笑って済ますこともできるだろう。
しかし勇気を持って異議を唱えることも大事である。
そのときには相手の立場を尊重する態度は是非必要である。
最低限のマナーを守るなら日本において言論は原則自由である。
『空海の風景』で空海を知り、興味を持ってさらに色々な文献を調べるようになった人もいるだろう。
功績も大きいのだ。
結局、どのように捉えるかは、読者に委ねられる。
さて、空海がこの本を読んだらどう思うだろうか。
「わしにもそんな頃があったよなぁ。」と笑い飛ばし、忘れた頃にチクリと何か鋭いことを言いそうだ。
さあ、あの世で空海に会った司馬遼太郎は何を言われただろうか。








