幻の時間



早くしなければ


12時の鐘が鳴ってしまう


白く輝く長い階段を


駆け下りながら


塔台の大時計の針が


一秒一秒刻んでゆく


約束の時間へとーーー



魔法使い(おばあさん)は身寄りのない私に


素敵な素敵な


魔法をかけてくれた



今宵一夜


みんなが憧れる王子さまと


ダンスをすること


純白のキラキラしたドレスを着て


ガラスの靴を履いて



目眩(めくるめ)く刻(とき)



華麗な音楽に合わせて


王子さまと楽しくダンス



優しい淡い瞳に


吸い寄せられて


私は酔ってゆく



刻は一刻一刻と


刻んでいることを忘れて



魔法使いは言った


12時までには戻るのだと


時間を過ぎたら


おまえは醜い人形と


なってしまうのだから



私ははやる心で


何度も頷いて



南瓜の馬車に揺られながら


夢にまで見た


お城の舞踏会へ



豪華な衣装は


まるで私を御伽の国の


お姫さまのようにしてくれる


黄金に輝く冠


指に赤く光る宝石



全部全部


夢のよう



けれど



それももうお終い



浮かれた私は


魔法使いの忠告も忘れて



気付けば時計は


もうすぐ12時



急がなければーーー


私は人形になってしまう



必死に階段を


駆け下りる私を


素敵な素敵な


王子さまは追いかけてくる



5・・・4・・・3・・・



ああ


あと僅かで


刻の終わりを迎えてしまう



ああ


王子さま


どうか


追いかけないで


そんなに


追い詰めないで



人形になってしまうから



2・・・1・・・



ああ


私の夢の時間が終わる


散ってゆく・・・



ゼロ。



無惨にも私は


王子さまの目の前で


醜い醜い人形となってしまった



形だけになっても


涙は流れるもので



優しい優しい王子さまは


人形となった私の亡骸を


抱き締め


口づけしながら


涙してくれる



ああ


私は人形になってしまったけれど


愛する王子さまを


手に入れることができた



愛しい王子さま


どうぞ泣かないで



私は永遠に


あなたのものなのだから



魔法は一瞬


儚い夢一夜


幻の時間



幻の時間・・・




    線光花火



ぽたぽた落ちる


線光花火



その儚い様は


まるで今の私たちのようだね



地面に落ちて


すぐ消えちゃって


ほんの一瞬の煌き



美しいね


綺麗だね



きっと私たちの想い出も


この線光花火のように


綺麗なままで


心に在るよ


ずっと・・・



だから


今は泣くのはやめよう


こうして


あなたと肩を並べていられるのも


今だけだから



ぽたぽた落ちる


線光花火



静まりかえった


夜の中で燃え尽きようとしてるよ



ちりちりと


細い火花を咲かせて


一生懸命刹那を生きてる



哀しいね


切ないね



だから


今の私たちも


こんなにも苦しいんだよ


この花が私たちに代わって


美しく散ろうとしてくれてる


そっと・・・



この花の命が終わったら


二人反対の道へと行こう



だから


それまで


もう少し


この花を愛おしもう




   彗星の如く



彼は彗星の如く


この世を去った



哀しむ間もないほどに


それは瞬く間に消えていった



乱暴者と囃し立てられ


うつけ者と貶され


奇抜で突飛で


誰にも理解されない孤独な魂


人々に敬遠され


家族に畏怖され


それでも自分を信じ


貫いてきた人生を



星となった今


彼はどう感じているのだろう



早すぎてしまった


その生命(いのち)は


この国の運命を


変えるには必要不可欠だった存在で



次代が決まれば


もうあとは眠りに就くだけ



眠れよ眠れ


その魂よ安らかに



現代(いま)となっては


歴史の中の偉大なる人


彼の造った国は


彼の思い描いた夢は


少なくとも私たちに


潤いをもたらせ


今なお生き続けている



荒れ狂った野を


切り開いてゆく独創性と


豊かな知性


勇気と行動力


先導力と魅力


天性の誇りと先天の明


時代は彼を欲し


酷使し


葬った



まるで


彗星の如くーーー




     はつ恋



あなたを想うごとに


苦しくなるこの胸の内よ



たとえば


空を見上げた時



たとえば


雨に濡れた紫陽花を見る時



たとえば


静かに流れる川を見る時



あなたの笑顔が浮ぶ



それだけで


苦しくて  苦しくて



涙が溢れてくる



人を想って泣く感情なんて


今まで知らなかったのに



このときめきよ


この切なさよ



私の思考総てが


あなたで染まり


あなたで支配され


あなたに満たされている



この胸の熱い想いは


あなただけに焦がれる


溢れる恋情




    学校



型にはまった生活


大人(せんせい)たちの言うがままに


ただ頷いて



それが良いのか悪いのかも


自分の脳みそでは考えず



「正しい」ということを正しいと信じ


「悪い」ということを悪いと認識し



綺麗に作ってくれた


レールに乗っている



脱線することもなく


事故も起こらない



でもそれは本当に


「幸せ」なのだろうか?



戒律と規律


正義と規則



疑問に思うことは


いけないことなのだろうか



逆らうことは


いけないことなのだろうか



ぼくらは現在(いま)


何を学んでいるのか



そもそも「学ぶ」とは


どういうことなのか




   だまって



だまって


私を見つめて


その綺麗な指で


私の指をからめて



白いうなじにキスして



今宵私は


あなたに堕ちる




   アリス



「その首をちょん切っておしまい!」



アリスは逃げたよ


飛ぶように逃げたよ



好奇心と出しゃばりなお口が


災いしてとうとう


あのおこりん坊の女王さまを


本気でおこらしちまった!



大変だ


大変だ



ほらほら女王さまが叫んでいる



アリスはチェス盤の上で


走っている


逃れられないのにね



ほらほら後ろから


トランプの兵士が


そのかわいいお首を


チョコンと切っちゃった!




   罪と罰



ぼくは事故に遭いました


大きな大きな大事故です


ぼくは死にかけました



いいえ


死んだのです


一度は黄泉の国へ赴き


綺麗な花畑に掛かる


赤い橋を渡ろうとしたのです



ですが誰かが一生懸命


ぼくを呼ぶので振り向きました



その声はもうずっと前に


死んだ父でした


母もいました


まだ幼かった弟もいました



彼らもまた


事故で死んだのです



ぼくは懐かしさのあまり


彼らに近付こうとしました


けれど逆に彼らに


来てはいけないと注意され


その指示に従いました



すると


目を開けたら


ぼくは病院に居ました


そうです


ぼくは一度死に


黄泉返ったのです



ぼくの心臓は


母のものでした



ぼくの両目は


父のものでした



ぼくの脳は


弟のものでした



目覚めたぼくは


もうぼくではなくなっていました



ぼくは一度死に


黄泉返り


そうしてまた死にました




   ヒーロー



彼はぼくらのヒーロー


紛争の和平を成立させたよ


冷戦がなんだって?


もう終わったことさ


どんな成り行きでも


結果が誰の血も流れて


いないならオーライ



「人権」「民主主義」


その名の正義に酔いしれて


声高らかなロマンスグレーの


偉人さんよ



いいさ、腹くくったさ


さあ、ぼくらはついていこうぜ


彼の庇護の下に居れば


どんな問題もノープロブレム



たとえ参拝して詰(なじ)られても


弱腰だと非難されても


同情だけ誘っておけばオッケー



主張する振りをして


お茶汲みOLに負けないような


サービス満点なお接待で


気分は上々



だって彼はヒーローだから


目立ち過ぎることは禁物だろう?



彼を怒らせたら怖いということは


ぼくらが一番知っているのだから



また「アレ」を落とされたら


一発ケーオー


また闇市に逆戻り



彼は寝る暇もなく


いつでも見張っている



武力行使を含めた


監視を続けて


「内政干渉」なんてなんのこと?


知らんぷりは世界一



批判も正論にすり替えれば


馬鹿な観衆はどうせ拍手するさ



紛れもなく彼がナンバーワン


世界の王さまだ



だからぼくらは


心中する覚悟で


どこまでもついていこうぜ


世界一弱気な日本人!




   懺悔文



我ら懺悔す


生まれてこの方


妄想に惑わされ


衆罪(しゅざい)を作る



身口意(しんくい)の業


常に顛倒して


過って無量不善の


業を犯す


珍財を慳悋(けんりん)して


施しをせず


意のままに放逸にして


戒を持せず


しばしば忿怒(ふんぬ)を起こして


忍辱(にんにく)ならず


懈怠(げたい)を生じて


精進せず


心意散乱して


座禅もせず


諸仏を厭悪(えんの)するを


恥じず


菩薩の苦悩する所を


畏れず


遊戯笑語していたづらに


年を送る


空しく日を過ぐ



善行を勤めずして


悪行を営む


利養を得んと欲しては


自徳を讃じ


名聞を求めんと欲しては


多罪をそしる



勝得(しょうとく)の者を見ては


嫉妬をいただき


卑賤の者を見ては


驕慢を生ず


富饒(ふねう)の所を聞いては


希望をおこし


貧乏の類を聞いては


常に厭離す



ことさらに


殺し誤って殺す


有情の命(めい)


あらわにとり


密かに取る


他人の財


觸(ふ)れても觸れずしても


非梵行を犯す


仏を観念する時は


攀綠(はんえん)をおこし


経を読誦する時は


文句を錯(あやま)る


もし善根(ごん)を作れば


有相に住し


却って輪廻生死の


因縁となる


行住坐臥


知ると知らざると


犯す所の是(かく)の如くの


無量の罪



今三寶(さんぽう)に對(たい)して


みな発露し奉る


慈悲哀愍(あいみん)して


消除せしめ給ひ


乃至法界(ほっかい)の


もろもろの衆生を


三業(ごう)所作の


是の如くの罪を


我みな相代わって


悉く懺悔す



更にまた


その報いを


受けしめざれ



南無懺愧(ざんぎ)懺悔無量


所犯罪