ちょうちょ雲
この身は
まるで
ちょうちょ雲のように
ただ
ふわふわと
流れに
流れて
風が吹けば
そちらへ
すいっと
寄っていき
目立たぬよう
目立たぬよう
はみ出さぬよう
はみ出さぬよう
幾重にも
注意して
あとは
ふわふわと
揺るいでいるだけ
一つが離れれば
はぐれぬよう
ついていき
ただひたすらに
華やかに
見えるように
浮んでいるだけ
ちょうちょ雲のように
ちょうちょ雲
この身は
まるで
ちょうちょ雲のように
ただ
ふわふわと
流れに
流れて
風が吹けば
そちらへ
すいっと
寄っていき
目立たぬよう
目立たぬよう
はみ出さぬよう
はみ出さぬよう
幾重にも
注意して
あとは
ふわふわと
揺るいでいるだけ
一つが離れれば
はぐれぬよう
ついていき
ただひたすらに
華やかに
見えるように
浮んでいるだけ
ちょうちょ雲のように
エイリアン
奇妙な奴だ
緑色の顔
腫れぼったい
大きな目
手足は蜥蜴のようで
口からは赤い
長い舌が
チロチロと
気持ちが
悪いと思って
ぼくは思わず
目を逸らした
大きな目が
ギョロギョロと
辺りを見まわして
まるで威嚇するように
いや、
何かに怯えているから?
自分には
まるで無頓着で
常に人の気配に
注意をはらっている
なぜ
あのバケモノは
わずかに
震えているのだろう?
部屋の鏡を見て
ぼくは驚いた
あの、
バケモノは
ぼくだったから
いつの間に?
いや、
最初から
こうだったのか・・・
それとも
いつしか変わってしまったのか・・・
ぼくは人知れず
静かに
涙をながした
うさぎの眼
赤い眼を見ると
私は恐怖を覚える
奥の奥の
さらにそのまた
奥のーーー
己でさえ無意識の
ある部分を
ミスカサレテイル
そんな気がするから
うさぎのように
単純でヤワな
動物の眼は
私を罵倒する
スベテカラ
主(あるじ)
もっと私を見て!
しっかりと確かめて
あの人なんか知らない
あの子なんてどうでもいい
私だけを
私だけを見つめて
真実?
希望?
夢?
私の真実がどこにあるのか
教えて
自分では見えない
感じることさえできない
その確かなものを
希望や夢は
誰のために存在している?
あの人のためでもなく
あの子のためでもない
そう 私のためにある筈
なのに心に沁み通らない
想いは総て空回りで
何も手に入らない
ちゃんと私だけを見て!
私だけを
あなたの確かな
その両の眼(まなこ)で
その慈悲深い
両の手の平で受けとめて
何もできない
すればするほど
知れば知るほど
幸せも正義も
遠ざかってしまう
どこへ行ってしまうの?
どうして私の手の内から
逃げていってしまうの?
何が原因か
何がいけないのか
いつでも真実を
見つめているつもりなのに
気付くと流されている
ああはなりたくない
こうはなりたくない
想いは焦るばかりで
ちっとも体がついていかない
私の未来
私の生
総て遠い存在
何も感じない
この世の中
人々は感情のない
きいろい人形
ただ動いて 眠って
夢を見ているのだろうか
愛を感じているのだろうか
知らない 知らない
私は知りたくもない
眼を瞑ろう
あの子たちのように
何も知らないふりをして
生きていこう
永遠に
そう誓った筈なのに
やっぱり眠れない
魂は水音のように
やがて滝となるであろう
やっぱり私は真実を見たい
見つけたい
あの人なんて知らない
あの子なんてどうでもいい
お願い
私を見て!
私だけを
私の総てを
存在を
あなたに捧げるから
だから私だけを
あなたのお傍に
井戸の中
井戸の中を覗いてごらん
おまえには何が見えるかい
今までの驕りの罪
人を騙した罪
父母を敬わなかった罪
さあ
覗いてごらん
おそらくおまえには
地獄しか映らないだろう
犬畜生の世界
針山の世界
赤池の世界
餓鬼の世界
諍いの世界
それがおまえの顔さ
おまえが犯してきた
罪の総て
懺悔することも無く
敬うことも無く
他人を陥れ
甘い蜜を吸ってきた
成れの果てのおまえの顔
今更どう足掻いても
過去の罪は消えぬ
何を後悔している?
何を吠(な)いている?
何を怖がっている?
おまえがしてきたことではないか
おまえが好きでやってきたこと
おまえが振り返らずしてきたこと
一体おまえには
価値が有るのだろうか
一人の人間として
困った時のなんとやら
どうせおまえは
それで生きてきたのだろう
吠いても消えぬ罪
おまえの罪は
総て知っている
もう逃げることなど
できはしない
もう一度
井戸を覗いてみよ
何が映っているかい
そこにはおまえが
これから行く世界が
待っている
これがおまえの人生
甘い花の蜜のような
五色の雲がたなびくような
黄金の雨が降るような
そんな世界など
見えやしない
おまえが来るのを
今か今かと待ち構えている
地獄の番人たち
今おまえをこの井戸に
突き堕(おと)してやろうか
今おまえをこの井戸に
捨ててやろうか
人生
水の流るるが如し
その水の流れに
逆らってきた
愚かものよ
おまえには
地獄がお似合いだ
真剣に生きてきたか
真実を見つけようとしたか
父母を大切にしてきたか
仏に礼拝してきたか
友を裏切らなかったか
先人を罵倒しなかったか
胸に手を当てて
考えてみるがいい
おまえには何が残っている?
何度念仏を唱えたか?
百回か?
千回か?
一万回か?
その中でおまえが真剣に
拝んだ回数は何回だ?
一回か、
二回か、
三回か、
神仏を敬う振りをして
本当の信仰をせず
親孝行する振りをして
うだうだと日々を過ごし
親友の振りをして
心では悪口雑言をし
敬う振りをして
慢心を育てる
懺悔する心も無く
ただ無駄な人生を
過ごしてきたおまえには
本物の愛情が無い
井戸の中
それはおまえの醜い顔
本来の姿
心の中
井戸に映るは真実のみ
嘘は映らない
真実に眼を向けよ
現実を直視せよ
極楽浄土はほど遠い
人を叱咤する前に
人に説教する前に
人に物事を教える前に
まず己から道を正せ
素直に行動せよ
精進せよ
見返りを求めるな
神仏に忠実に
父母の言うことを聴き
友人を大切にし
先人に習え
言うは易し
行うは難し
竹のようにまっすぐな心
海のように澄んだ心
青空のように偽らない心
己を見つめよ
過去を見つめよ
今日を見つめよ
さすれば井戸には
極楽浄土が映る
孤灯(ことう)のよろこび
人は私のことを哀しみと呼ぶ
人は私のことを寂しいと言う
なぜ?
なぜなの?
私は常に一艘の小舟
緩やかな波に揺られながら
月を友に夢など語り合う
優しい穏やかな中で
夜(よ)が明けるまで
美しい詩(うた)をうたって
その清光(せいこう)の中に
いつしか溶け込みたい
この身も心も
陰りない一つの
かけらとなって
この空を羽ばたきたい
どこまでも
月光や 孤灯に浮ぶ 夢の跡
※孤灯~一つ寂しく灯るともしび。
清光~澄みきった清らかな光。
一途坂
私は女
着物の裾から
ちらりと白い足
真夏のじりじりとした
昼時に
白い日傘を差して
坂を上って貴方に逢いにゆく
どこかで蝉が鳴いて
私は真新しい
レースのハンカチで
頬を伝う汗を拭って
必死になって坂を上がる
ただ逢いたい一心で
貴方の顔を
思い浮べながら
ひたすらに上ってゆく
赦されぬ恋
いたたまれない感情
罪の意識を胸に
それでも逢いたいという
醜い女の一途な執念
ゆらゆらと地が揺れる
真昼の蜃気楼
もう蝉の声も遠い
いつまで続くのだろう
この坂道は
すべてを裏切って
伴侶(ひと)を欺き傷つけて
苦しみの罰を受けても
なお貴方に惹かれてゆく
哀しい女の情念
此処は本当は
蜃気楼なのか
ならばいっそ消えてしまいたい
陽炎のように
蜃気楼の中に溶けて
いつしか空気になれたら
銀の指輪をそっと
袂に閉まって
私は坂を上る
貴方が待っているあそこまで
ただひたすらに
私は女ーーー
失恋
どうして人は
独りになりたいと思った時
海へいくのだろう
あの人を忘れたい
早くあの人のことを
できるなら
出逢う前の私に戻って
この苦しみを知らない
刻(ころ)に還りたい
私の恋心を
この大きな 大きな
海の奥底に
閉じ込めることができるなら
お願い
今は独りにして
想い出を引き摺ったまま
今はまだ
綺麗に笑えないから
この闇の色が似合う
さざめく海辺に居たい
まだ想いは冷めないから
どうか冷たい水よ
白く光る波よ
この切なる想いを
淡い泡に変えて
やがては消えゆく
儚い幻に変えて
私は独り佇む
戻せない時間(とき)を抱いたまま
怒り
その無惨な姿を
私はどうしても許せないのだ
その汚がらわしい心
その無感情の冷たさ
その偽りの思いやり
どれも不純で不誠実で
ユルセナイ
笑って一体何を得ようというのか
池の中の蛙(かわず)のように
狭い世界の中で
ただ叫んでいるだけの
おまえはとても憐れで
ユルセナイ
その感情に名前を
付けるなら
それはーーー
「怒り」だ
アメリカナイズ
あいつはかぶれちまったのさ
「西洋」という名の偽りに
自分の意志を持たず
ただアメリカの傘の下に
雨を凌いで丸くなって
その姿が滑稽であるなんて
ちっとも思っちゃいない
笑える話じゃないか
あいつはもう戻らないのさ
「日本」という古風な世界に
歴史をかなぐり捨てて
ただ新しいものだけを
求めて浮かれた旅人になって
その姿が滑稽であるなんて
ちっとも思っちゃいない
泣ける話じゃないか
もうあいつは「此処」には
いないんだ
遠い遠いお空へと
行っちまったんだよ
哀しいねーーー
※アメリカナイズ:アメリカ的にすること。アメリカ風になること。