だからそのとき
何の感情も湧かないほど
物凄く自然に
でもどこか
物凄く
不自然に用意周到に
それは起こった
そして
その日の夕方
わたしが部屋にいたら
元夫が帰ってきた音がして
わたしはもう
部屋から出なかったが
必要な物を
持ち出していたのは
分かった
そしてわたしは
自分や娘や共有の生活スペースは
ずっと片付けを続けていたが
その春から
体を動かしたくて
さらに他のスペースも全て
スッキリしたくて
たまらなくなっていたので
彼らがいなくなり
それがこんな形で叶ったことに
驚きながら
少しずつ
掃除や不要物の処分や
整理整頓を始め
その流れのなかで
彼らの居たスペースの
掃除はもちろん
自然と
彼らの荷物も
まとめ始めた
そしてその間に
一切もう会話もできなくなっている
家を出て行った元夫が
不動産会社や弁護士や銀行を通じ
まだ残っていた
この家の支払いや家の売却の件で
強引に進めてくることも
何度も何度も起こり続けた
だから
大掃除や
そんな出来事のたびに
物理的な
整理整頓や掃除は
もちろん
わたしのなかで
精神的な
凄まじい混乱と浄化と手放しと
人生の整理整頓が
起こった
そしてそれは
最初は
この出来事を
冷静にみて
わたしの全てではなかったが
分かっていたし
20年前に
最初それは
わたしの人生のなかで
一番起こって欲しくないことだったが
その後
何年も何年もかけて
点と点が繋がっていくたびに
「これは何かの罰なのか…」
と思ったそれは
素晴らしいギフトで祝福で
「なんて幸運なことだったのか…」
と分かっていったように
今回の
息子がいなくなるということも
わたしのそのときの
一番起こってほしくないことだったが
これが
素晴らしいことであることは
最初から分かっていた
でも
そのようなことが
起こり始め
家の掃除や片付けが
進むたびに
このように息子を授かり
もちろん
たくさんの周りの協力が
あった中でだが
純粋すぎるほど
必死すぎるほど
狂いすぎるほど
生きてきたからこその
わたしの
その
〝本質〟の周りにある感情が
激しく揺すぶられ始めた
だからわたしは
生き続けた
そして
4か月近く経ったころ
突然大きなトラックが
家の駐車場に止まり
荷物を取りに来たことが
すぐに分かった
そして彼は
わたしがまとめていた荷物を
運んでいき
そのときも
わたしは
ほぼ部屋にいて
ただ
その物音を聞きながら
今まで味わったことの
無いような
何とも言えない
色々な感情が溢れ
涙を流していた
そして
全て予想や直感でしかないのだが
家を出た直後は
隣県の実家に行ったのだろうな…
と思い
半年くらいした頃はふと
ああ、もうそこを出て
二人で暮らしていそうだな…
と思い
そうしたら
本当にひょんなことから
彼の住所が分かり
そこを出て
二人で暮らしていることが
分かった
でもそれは
「りんには
絵を描かせることは考えておらず
このまま二人で静かに暮らしていくので
そっとしておいてほしい」
と言いながらも
この家の
すぐ近くの
アパートに引っ越す
という
やはり、もう
偶然か必然か
純粋か作為かは
分からない
けど、それは起こり
良いのか悪いのか
嬉しいのか悲しいのかという
また、もう
何ともいえない選択を
彼は、彼らは、神は
していた
でもわたしは
元夫は前から息子に
携帯を持たせていたが
息子の番号は知らなかったし
知ろうとしたことも無いし
彼らの居場所を探したことも
探そうと思ったことも
一度も無いし
一度家のことで
会って話がしたいと
アパートに元夫を
訪ねたことはあったが
結局会えず、一度メールのやりとりをした
息子に会いたいからと
そこを尋ねたことも
何か具体的に行動を起こしたことも
一度も無く
だから
結局息子が
あの日出て行って以来
一切会わず
一切声も聞かず
一切メールなどもなく
一切偶然会うこともなく
今
一年半が過ぎようと
している