《年寄りの冷や水》とは、老人が年齢にふさわしくない危険なまねや、出すぎた振る舞いをすること。
《老いの木登り》ともいうそうだが、いい年をしてバカなことをしてしまった。
夕方5時半ごろ孫を保育園へ迎えに行った。孫はまだ明るいので園庭で遊ぶというので、プールの端に腰をおろして孫が遊ぶのを見守っていた。園児の多くは迎えに来てもらってからひとしきり園庭を走り回ったりしている。
すぐそばに鉄棒があって、三々五々園児がやってきてぶら下がったり、逆上がりの練習をしたりしていた。それを見ながらふと、この歳でどれくらいできるだろうか?と試してみる気になった。
昔から器械体操は得意な方で、高校時代に体操班に所属していたこともある。体育の授業で身体が柔軟だった私を見た同級生が、自分がすでに入っている体操班に誘ってくれたのだった。生まれて初めて平均台や段違い平行棒を経験して楽しかったものの、汽車で1時間以上かかる遠い郡部からの通学では時間的にきつくて半年で辞めた。
余談だが、私より3歳年上のダンナは私と同じ高校の出身。同時に在学していたことはなかったが、ダンナも体操班に所属していた時期があった。
ダンナは、夏休みに先輩が来て、鉄棒で大車輪を練習させられた時、恐怖のあまり鉄棒をしっかり握りしめたまま大車輪をして、手の皮だけが鉄棒に残ってズル剥けになったらしい。先輩のしごきに腹を立てたダンナは夏休み明けには退部。続けて高校から体操始めた組は全員辞めたそうだ。
ダンナも私も中学時代は3年間ブラスバンドだった。体操なんて高校から始めてては遅すぎるのに、そろいもそろって同じ道を辿っていたのだった。
話は保育園の鉄棒に戻るが、園児用に3種類の高さの鉄棒があって、一番高い(といっても園児用)鉄棒を握ってみたら、逆上がりなぞ試すまでも無く無理なことがわかった。
両手で鉄棒をつかんで前まわりの体勢を撮ろうとジャンプしたものの、上がり切れずに降りたのだが…
その時に鉄棒で胸を強打した。〈ああーっ。やってしもた!また軟骨骨折や!〉こうなるのは火を見るよりも明らかだったのに…。
そもそも私の手首の骨はリウマチで破壊されていて、四つん這いさえできないのに、この鉄棒で自分の身体を支えられるなんてありえない!なんでこんな暴挙に出たのか?どう考えたらいいのか。???が胸を去来した。
しかし、骨折には慣れたもので、アルコールを控えて、湯船には浸からずシャワーを使い、湿布を貼って、コルセットを締めて、安静にしていた。完治するのに3週間かかることもわかっている。
この件では特に病院や整骨院に行く必要はないのだが、数か月前から右肩あたりの痛みが気になっていたので、軟骨骨折のことも含めて思い切って整骨院で診てもらうことにした。
昨年骨折した右肩の影響で、肩甲骨が正常な位置になくて胸椎の動きが悪く、身体が左側に傾いているそうだ。ぎっくり腰らしき腰痛もその後の腰痛も関連があるようで、身体の歪みを治すために週に3回くらい通院することになった。
鉄棒の一件が無ければ、未だ整骨院を訪れないままで原因不明の不調続きだったことだろう。そう思うと、今回の鉄棒事件は、より深刻な身体の歪みを教えてもらえるきっかけになったということだ。
また、強制的に休養をとらせて、溜まった疲れを癒やす機会もいただいたのだと思う。
しかしながら、本当に老体かつ障害者であることを自覚せねば…。