老母の断捨離 | アブエリータの備忘録

アブエリータの備忘録

Yesterday is history,
Tomorrow is a mystery,
Today is a gift.
That's why it is called "present".


実家の母が「身の回りの整理を手伝ってほしい」と言って、日にちまで指定してきた。


日を指定してきたのは、同居している弟夫婦の留守を狙っていたようだったので、万障繰り合わせて手伝いに行った。


母の目論見は、自分の持っている宝飾品(?)を、私と弟たちのお嫁さんの三人に分け与えたいが、まず娘の私に好きなものを先に取らせて、残りを三等分しようということらしかった。


母は、昭和4年生まれの85歳で来月86歳になる。娘の私の年齢を考えると若い方だ。19歳で結婚し、20歳の誕生日の3週間後に私を生んだ。若いころは私を「妹です」と言っていたらしい。


母が未亡人になったのは51歳の時だった。その後は、まさに「女やもめに花が咲く」生活で、父が生きていた頃よりずっと自由に海外旅行や習い事を楽しんでいた。


父は5千万円の借金を残した。出資していた共同経営の会社から手を引くことで負債をチャラにしたあと、雀の涙ほどのプラスになっただけだったということだ。


母は自宅でクリーニングの取次店を始めた。それが結構繁盛して、自分の才覚で小遣いを稼ぎ、しょっちゅう海外旅行へ行き、いろいろな習い事をしていた。


英会話、カラオケ、書道、バレエ(トドのような体型なのだが…)、川柳、…ゲートボール。書道は段位を頂くほど(なのに金封の表書きはチョーへたっぴい)。川柳は新聞に投稿して年間最優秀賞をもらったことがある。


要するに、身体が元気な時は、目いっぱい人生を楽しんでいたということだ。


余談はこれくらいにして、話を本題に戻そう。


娘と嫁2人に分けたいと考えていたというアクセサリーは、10個くらいの化粧箱に、ジャンル別に分けられていた。
おしゃれ?な母は、いつも外出には何らかのアクセサリーを身につけていた。首飾りやブローチ、なかでもイヤリングの数は相当なものだった。


お嫁さんたちを出し抜いて、好いものをもらう気などさらさらなかったが、母と私は時代もセンスも異なるので、娘の私は何一つ「欲しい」と思うものがなかった。いわんや嫁さんたちをや!だ。


もともと何の期待もしていなかったのだが、こんなものを嫁さんたちに分けようとしている母の時代錯誤感に愕然とした。ほとんどゴミに等しいものだったから…。



「姑の身につけたものなど嫁が欲しがるわけがないこと」「自分の思い入れはあっても他人にとってはゴミ同然であること」「【遺品整理】と考えてもいいこと」等々、を伝えた。母もある程度は理解していたようだが、意外にショックが大きかったようだった。


大切に思って残してきたものを「ゴミ同様」と言われて、自分の人生までも否定されたような気がしたのだろうか。改めて自分という存在の軽さに寂しさを感じたのではないだろうか。


しかし、「整理の基準がわかって良かった」と気を取り直したようだったので、断捨離の具体的な方法を提案した。


こんなものまで…
とびっくりするようなものがいろいろとってあった。私の独身時代に使っていたトンボメガネや、私が編んだミトン、アラ還暦の年齢となった弟たちの三尺帯(浴衣帯)…。




子供のモノは思い出があって捨てられない。私も息子たちのものを遺している
。長男の浴衣と帯は孫に渡したが、次男のモノはまだ孫のサイズに合わないので残してある。昔の三尺の柄は絞り模様が5つもあったが、この新しいのには二つしかない




弟たちの三尺帯まで持って帰らされたがどうしろと?、また私のモノが増えてしまったではないか。


要するに、<自分の手で捨てたくない>のだ。「誰かに渡してそのあと捨てるのは構わないが自分が捨てるには忍びない」ということだ。その気持ちはよーくわかる。しかーし…


母の目の前で、後生大事にとってあった様々なガラクタを、もっともな理由をつけてどんどんゴミ箱に捨てた。


私の断捨離経験を踏まえて、私以上に捨てる決断ができそうもない母に、要らないとわかっていても捨てられないモノを入れるための【お悩みカゴ】として使う、
大きなランドリーバスケットを持参していた。


とにかく【第一弾】は、断捨離の基本だけで終了にして、何か月後かの【第二弾】になればまたキッパリ捨てられるものが出てくるだろう。そうして【第三弾】、【第四弾】…?そんなことはないだろうなあ
我々の気力は日に日に衰えているのだから。


またまた話がそれてしまった。



肝心のアクセサリーについては、いわゆる「金目のモノ」は全くなかった。母は、自分独自の美的感覚で衣服や装飾品を選ぶので、ブランドや高級品には縁がない。もちろんボンビーバアサンなので当たり前なのだが…


金やダイヤの買い取り店へ持っていけそうなものは、18Kのネックレスとダイヤらしきイヤリングだけだった。一応保証書が付いているので、買い取ってもらえるかもしれないと預かってきたが、まあほとんど期待薄だ。


耳が遠い母との作業は、終始大声でのやりとり。2時間ほどの作業で二人とも疲労困憊してしまったので、早めに引き上げたダッシュ


私も「よろず整理中」なのだが、母の整理を手伝ってみて、【断捨離】の良いヒントを得られたように思う


<他人様に手伝ってもらうべし