[こちらあみ子] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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森井勇佑監督・脚本。今村夏子原作。岩永洋撮影。青葉市子音楽。22年、アークエンタテインメント配給。

Amazon Primeにて鑑賞。キネマ旬報日本映画第4位。11年、数々の賞を受賞した今村夏子原作の映画化。森井初監督作品。風変わりな少女あみ子を描いたヒューマン・ドラマであみ子役の大沢一菜は330人のオーディションで抜擢された。

昔から抑圧されたり、親の無関心という環境の中を強く生き抜く子供たちを題材にした映画、是枝裕和の[誰も知らない]やフランソワ・トリュフォー監督の[思春期]とか。この映画もそうした一本なのだが、うーん、これは全くいいと思わないな。何故ならこのあみ子って、親の問題以前に間違いなく発達障害で、まず病院に通わせるべきなんじゃないかと思うからだ。

広島の公立小学校に通うあみ子は純粋無垢、あまりにストレートなために他人を気持ちを理解できず、学校ではトラブル続き。同級生ののり君が好きだが、迷惑がられている。
家族何開いてくれた誕生パーティでも感謝の言葉もなく、プラゼントのトランシーバーに夢中。妊娠中だった母さゆり(尾野真千子)が死産。よかれと思い庭に弟の墓を作るが母はそれ以来心を開かず寝た切り、優しかった兄は考太(奥村天晴)は不良になっていく。自分の部屋で聞こえる謎の音を弟の幽霊だと父哲郎(井浦新)に訴えるが妹だったと伝えられ、相手にされない。やがて、あみ子は祖母の家に引越しが決まるが、離婚すると思った両親は…。

背景的な物何何も提示されないが、現在進行形のドラマの中に断片的に回想が挿入される。小学生から高校生のあみ子を演じた大沢一菜はあみ子のイメージ通りなのだろうが、母のさゆりは息子や娘に敬語を付けて呼ぶので後妻なことはわかる。一番問題なのは、何があっても無関心な父親だろう。兄が不良になっていく要因もそこなのだろうがもう少しエピソードを挿入しないと、説得力がない。問題だらけの家族、あみ子はトランシーバーのみを友達に生きていく。勿論、様々な事案が起こる現代、こんな子やこんな家族がいても不自然ではないかもしれないが、問題提起以外、不快な映画でしかない。読書でベストテン外だったのは同じ意見の方が多かったのではないだろうか。