是枝裕和監督。坂元裕二脚本。近藤龍人脚本。坂本龍一音楽。23年、東宝・GAGA配給。
DVDにて鑑賞。問題作を連発してきた是枝裕和監督の最新作。キネマ旬報日本映画第7位、読書3位。
これは見せ方の上手さで見せる。珍しくオリジナル脚本でない分、監督としての是枝裕和の技を存分に見せてもらった。視点の転換、これは黒澤明監督の[羅生門]に通じる技法で、時間軸も次々に切り替わるが、前に映像として見せている部分に繋がるため、観ている側はこう繋がるのか!とその絶妙な真相解明に唸らされていくのだ。
シングルマザーの早織(安藤サクラ)は、息子の湊(黒川想矢)と大きな湖のある町に暮らしている。湊は同級生の依里(柊木陽太)と仲が良く、子供たちは自然の中で穏やかな日常を過ごしていたが、ある日学校で喧嘩が起きる。双方の言い分は食い違い、暴力をふるった教師保科(永山瑛太)に抗議しようと早織は学校に乗り込むが、保科も校長の伏見(田中裕子)も煮え切らない態度で接し、早織の怒りは爆発する。やがてメディアを巻きこむ騒動に発展するのだが…。
最初の早織の家族の視点で描かれる物語は、いかに学校教育に携わる者たちの保身となおざりな態度に早織同様、怒りの視点を向けるが、ここで是枝監督視点を逆に教師の保科の視線から物語を裏側から描くことで事件の真相を炙り出していく。生徒たちの証言は時に曖昧でどれが真実で誰が悪人なのか、観てるいる側は考えさせられる。やがて、星川依里の父(中村獅童)が登場、虐めを受けていたのは彼であることがわかり、凄いのはさらにその先があることだ。えーっ、そこへ行くかー。いかにも現代的でありがちな結末ではあるが、この展開には是枝監督の[奇跡]を思わせる雰囲気を持った映画だ。
しかし、この映画で安藤サクラに主演女優賞?違うだろ。彼女は主演ではない。この映画の主役は素晴らしい演技を披露してくれた黒川、柊木、子役のふたりだ。様々なトラウマを抱えながら、生き抜こうとするピュアな姿に絶賛の拍手を送りたい。
是枝監督の中では本作も秀作の一本。構成の面白さを是非、ご覧頂きたい作品。