[DESTINY鎌倉ものがたり] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山崎貴監督・脚本・VFX。西岸良平原作。柴崎浩三撮影。佐藤直紀音楽。宇多田ヒカル主題歌。17年、東宝配給。

Amazon Primeにて鑑賞。西岸良平の人気コミックを[ALWAYS三丁目の夕日]のコンビ山崎貴監督が得意のVFXを使って描く、冒険ファンタジー。

ファンタジーは荒唐無稽な想像の世界だから何でもありなんだろうし、発想は西岸さんの原作が元なのだから、全部が山崎監督のアイディアではないのだろうが設定自体、鎌倉を幽霊や魔物が日常のように存在する町にしてしまうことに無理がある。無茶苦茶な世界構築、様々な黄泉の世界のルールを作ってしまうなど、破天荒なんてものじゃない。でも、主人公で作家の一色正和(堺直人)の若き妻亜紀子[高畑充希)が霊体になってしまったことに気づき、メフィストである死神(安藤サクラ)により黄泉の世界に連れ去られるまでの物語が長過ぎる。そのため、映画の前半は何が目的なのかもわからないまま、不可思議な世界を懸命に頭に入れなくてはならない。先に亡くなる編集者本田(堤真一)、このトカゲみたいなクリーチャーもふざけ過ぎているが、 彼の言葉をヒントに正和が黄泉に妻を呼び戻しに行くところで、やっと冒険譚になるので、そこまで間が持たない。実はその前半に物語の核心に繋がる伏線を沢山描いているので、なしにもできず、そこがこの作品の最大のマイナスポイントだ。

年の離れたミステリー作家一色正和と結婚した女性亜紀子。彼女は鎌倉での新しい生活に驚く。その街には、魔物や幽霊、妖怪や仏など、人間以外のものが一緒に暮らしていた。戸惑いながらもその生活に慣れ始めたある日、夫婦を悲劇が襲い…。

後半のクライマックスはさすが山崎監督でスリリングで迫力ある冒険映画には仕上げている。クリーチャーは[スターウォーズ]、黄泉のイメージは[千と千尋の神隠し]を思わせる。日本屈指のVFXの技術には改めて驚かされるし、映画として最後は楽しませる山崎監督のエンタメ演出は職人だなとは感じさせたが、やはり全体的なイメージからすると、テンポがなく、彼の最大の持ち味は出しきれていない。あの江ノ電を再現する素晴らしい技術を生かす物語を選択して欲しかった。