[或る夜の出来事] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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フランク・キャプラ監督・製作ロバート・リスキン脚本。サミュエル・ホプキンス原作。ジョセフ・ウォーカー撮影。ルイス・シルヴァース音楽。34年、アメリカ映画。

Amazon Praimeにて再観。第7回アカデミー賞。作品、監督、主演男優、女優、脚色賞の主要5部門を独占受賞したフランク・キャプラ監督のスクリューボール・コメディ。

男女が出会うハリウッド映画の原点[ボーイ・ミーツ・ガール]、そして旅をして結ばれるロード・ムービー。マイク・ニコルズ監督の[卒業]はこれを原点にしているのでは?と思えるサプライズ映画。改めて観直してみると、フランク・キャプラ監督の映画って、映画の玉手箱的な御伽話なのだ。
あり得ないし、かなり無理があるのだが、見終わった後、どこか温かいものが残る、そんな映画が多い。

冒頭、娘エリー(クローデット・コルベール)の結婚を認めない頑固者の父親ぶりを見せつけるアンドルーズ(ウォルター・コノリー)やライターのピーター・ウォーン(クラーク・ゲーブル)をクビにする編集長も映画後半になると実は面倒みのいい人間であることがわかり、目立ちたがりのエリーの婚約者ウェストリー(ジェムソン・トーマス)だけは貧乏くじを引かされるが、素直になれない男女とそれをサポートしてくれる人たちが展開する粋な物語なのだ。

富豪令嬢エリーは父親に黙って婚約。怒った父にヨットに監禁されるが、海に飛び込み脱走、単身フィアンセのいるニューヨークを目指す。彼女が乗った夜行バスにたまたま乗り合わせたのが、新聞記者のピーター。彼は富豪が娘を見つけるため出した新聞広告で、隣の女性がエリーその人であると知り、特ダネ記事を書くため素知らぬフリをしながらバスで一緒に旅を続ける。だが、予期せぬ展開になり、旅の途中、恋に落ちてしまい…。

この時代、ヒッチハイクという移動方法もインパクトがあったのだろうと思うのは何よりクローデット・コルベール演じるエリーが自分の足を見せて車を止める場面であり、あの場面はまだ過激な表現に免疫のなかったハリウッドでは衝撃的な手法だったのだ。後半、父親が明かし、ピーターが接近した目的と仕組みはわかり、そこでふたりの恋愛は終わりのように見せておいて、一気に逆転させていく。[素晴らしき哉、人生]もそうだが、その大展開が痛快で面白く、まだ夢を持てた時代のハリウッド黄金時代を感じさせてくれる。
これもそんな一本だ。