[やがて海へと届く] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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中川龍太郎監督・脚本。梅原英司脚本。彩瀬まる原作。大内泰撮影。小瀬村晶音楽。22年、ビターズ・エンド配給。

Amazon Primeにて鑑賞。東日本大震災の前日に消息を絶った友人の行方と彼女の秘密を探す旅に出た女性の人生を綴る彩瀬まるの同名小説の映画化。

オープニングは海に消えていく女性のアニメーションで始まる。友人の卯木すみれ(浜辺美波)が消息を絶ったままであることを主人公湖谷真奈(岸井ゆきの)の独白でわかる。恋人だった遠野(杉野遥亮)の態度に不満を覚えながら、大学時代のすみれとの出会い、思い出が回想されていく。

すみれのいう謎めいた存在と独特の世界観。提示される回想の中では主人公真奈は彼女の実態を把握できず苦悩する。
岸井と浜辺は日本テレビのドラマ[私たちはどうかしている]で共演しており、その組み合わせのためか息は合っている。
真奈が勤める店のフロア・マネージャー、楢原(光石研)も自ら生命を絶つというアクシデントをきっかけに真奈は消息を絶ったすみれを探す旅に出るのだ。
 観ている側はやっとすみれの消息不明の要因が東日本大震災であることが提示されてくるのだ。
 謎めいたと書けば、ミステリアスな女性と書けばいかにものすみれなのだが、母志都香(鶴田真由)との確執。結局、真奈は何もすみれの存在について、掘り下げられてはいない。中途半端な描き方しかされないから、観ている側には何も伝わらない。その回答的に東日本大震災が提示されるが、そこで被害を受けた人々の唐突な告白が始まり、これを描きたいのであれば、こうした曖昧なやり方ではなく、もっと問題を直視して掘り下げないと遺族に対しても中途半端になってしまう。
 この映画、結局、何ひとつ掘り下げないまま、全部曖昧模糊として、映像化された感があり、観るべきところが何もない映画だ。綺麗にまとめるのではなく、すみれと真奈はプラトニック的な繋がりのように見せているが、はっきりと同性愛として描くとか浜辺美波を起用しているから、それができないというのなら配役の問題であり、もっと大胆にもっと衝撃的に描くべきだ。