[渇水] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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高橋正弥監督。河林満原作。及川章太郎脚本。白石和彌総合プロデュース。袴田竜太郎撮影。向井秀徳音楽。23年、KADOKAWA配給。

Amazon Praimeにて鑑賞。映画芸術日本映画第6位。白石和彌監督が初のプロデュースに回って作品。心の渇きにもがく水道局員と幼い姉妹との交流を通して、葛藤する姿を描く。

主人公である岩切俊作(生田斗真)自身の回想を巧みに絡めながら、冷徹に仕事に徹して水道局員として停止処分を実施していた彼の心の揺れと変化を丁寧に描き取っており、問題提起と生きる渇望を底辺の生活を強いられる姉妹との交流の中に浮き彫りにする秀作。

市の水道局に勤める岩切俊作は、水道料金を滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収および水道を停止する「停水執行」の業務に就いていた。日照り続き、群馬の夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々を送る俊作。妻子との別居生活も長く続き、心の渇きは強くなるばかりだった。そんな折、業務中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会った彼は、その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べるが…。

姉妹の母小出有希(門脇麦)はマッチングで生活費を稼ごうとして、父親は出て行ったまま。姉の恵子(山崎七海)は妹の久美子(袖穂)を父はスエズ運河で働き、雨が降る頃帰ると励ます。この映画はこの姉妹役の二人の好演が支えている。当初、仕事に徹する非情な岩切に疑問を感じている後輩の木田(磯村勇斗)は守るべきものができ変わるが、逆に岩切は妻和美(尾野真千子)と息子の境遇を姉妹の環境に重ね、心情に大きな影響を与えて突然、ある行動に出る…。

心の渇水に大きな虹、受水宣言で水のなかったプールに姉妹は飛び込んでいく。生活苦難者の水道を止めることはどうなのか?登場する姉妹のように親の無責任と放置、いくつかの問題提起を内包させながら、観る者に僅かな希望を感じさせる映画だ。