[クライマッチョ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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クリントイーストウッド監督・主演。N・リチャード・ナッシュ原作・脚本。ニック・シェンク脚本。ベン・ディヴィス撮影。マーク・マンシーナ音楽。21年、アメリカ映画。

Amazon Primeにて鑑賞。スキャンダルで中止になったシュワルツネッガーの企画をイーストウッドが自ら出演することで製作された作品。今のところ最新作で、キネマ旬報外国映画第4位。設定には若干強引な部分もあるが、人生の晩期を迎えたイーストウッドらしい秀作であり、愛と伝承の物語だ。

テキサス州。孤独に暮らすマイク・マイロ(クリントイースト・ウッド)は、元雇い主ハワード・ポルク(ドワイト・ヨワカム)から別れた妻レタ(フェルナンダ・ウレホラ)のもとで荒んだ生活を送る息子ラフォ(エドウァルド・ミネット)をメキシコから連れ戻してほしいと依頼される。半ば誘拐のような仕事だったが、マイクは渋々ながらも引き受ける。ラフォは母親に愛想をつかし、闘鶏用のニワトリ・マッチョを相棒にストリートで生きていた。途中、車を盗まれ、教会で寝泊まりするとカフェ女性オーナー、マルタ(ナタリア・トラヴェン)の協力を得てマイクとの間には恋心が芽生える。やがて、父親の真の目的がわかってくるが…。

マッチョという闘鶏のニワトリをポイントに使い。メキシコの牧場で、カウボーイとして生きてきた、乗馬、動物の治療まで様々な技術を屈指してみせるマイク、恩人の息子であるラフォにかつてはいたという息子を重ねるように技術を伝承していく。いくつかのピンチを設定しながら、亡くした妻を心の傷を埋めるようなマルタとの出会い。黒澤明は生涯を通してこの師匠から弟子への伝達の作品をテーマに描き続けたが、イーストウッドが最晩年を迎え、その同じような境地を描いたことが嬉しい。そして、特筆すべき場面はマルタという女性と出会い、お互いの支えになるように踊りキスするダンスのシーンだ。こうした抒情豊かなシーンを撮れることにこの、いまやアメリカを代表する大監督の健在を感じさせてくれた作品。[グラン・トリノ]ような完全度や緊迫感こそ薄れたが、この映画は、晩年のイーストウッドならではの味を感じさせてくれる燻銀のような名画と言っていい。

必見の一本。