飯塚健監督・脚本。加藤良太脚本。東野圭吾原作。山崎裕典撮影。海田省吾音楽。24年、ハピネット・ファントム・スタジオ配給。
新宿TOHOシネマにて鑑賞。東野圭吾の原作は20年近く前に読んでおり、その映画化作品は当たり外れが明確に出る。[容疑者Xの献身][マスカレード・ホテル]のように映画化作品として秀作になるものもある。本作はそのレベルまでにはいかないが、読んだのが古過ぎて、物語やトリックをまったく忘れていたために、結構楽しめた。
招待状で集められた7人の役者たちが、架空のシナリオを使った主演舞台の最終選考を行う中で、不可思議な事態に遭遇する様を描きだす。
東野圭吾らしい泣きのミステリーで本作もその異色タイプの作品と言ってよく、三重のトリックが仕掛けられている。オーディションは4日、映画はその日数の経過に沿って描かれていく。集められたのは全員役者、劇団[水許]のメンバーが六人、そしてメンバーの本多雄一(間宮祥太朗)に憧れて、前作の舞台でも最終オーディションに参加した解散した劇団員久我和幸(重岡大毅)。ここが原作と設定が違うのだが、メンバーのリーダー格雨宮恭介(戸塚純貴)、ヒロインで金持ちの娘、元村由梨江(西野七瀬)は久我ではなく、性格俳優の田所義雄(岡山天音)に憧れられている設定。かつて役を争い、舞台監督に身体を許して役を取った噂がある笠原温子(堀田真由)と役を取られた中西貴子(中条あやみ)の七人、舞台監督東郷は起こる事件を解決して犯人を突き止めた者を合格者とすると伝えてくる。
前の舞台で水許のヒロインを確実視され、落選して絶望した麻倉雅美(森川葵)の存在が明らかにされ、結果探偵役をやるハメになる久我により、真実が解明されていくのだ。
全員にアガサ・クリスティの[そして誰もいなくなった]が配られ、それをミスリードとして殺人が続くように錯覚させている。自分が推している堀田真由演じる温子は実は性格的に一番嫌なおんなであり、最初の被害者になるので、何だーと思ったが、様々なトリックが仕掛けられていて、最後まで楽しむことができる。細部の設定に関しては原作と変更されている部分もあるが、根本的なところでは変わっておらず、ラストの締めくくりは納得がいくものに仕上がっていた。