[蜘蛛巣城] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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黒澤明監督、脚本。小国英雄、橋本忍、菊島隆三脚本。朝井朝一撮影。佐藤勝音楽。57年、東宝配給。

スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて再観。シェイクスピアの戯曲[マクベス]を日本の戦国時代に置き換えた作品で、全編を能の様式美に拘って撮影がなされている。改めてみると蜘蛛巣城の跡から始まり、城主都築国春(佐々木孝丸)は北の館の主藤牧の謀略にあい籠城を余儀なくされる。それを打ち払ったのは一の砦を守る鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千秋実)であり、彼らはその報告のために城に向かうおり、要害熊手の森で糸紡車を引く物怪(浪速千栄子)と出会い、やがて武時は北の館の主から蜘蛛巣城の城主に、三木は一の砦の大将から息子の義照(久保明)は蜘蛛巣城の城主になると予言を受ける。
 現実は予言の通りになり、武時は北の館の主になるが、城主国春が御忍びで訪れると、武時の妻浅茅(山田五十鈴)は大望を抱き、蜘蛛巣城を根城に天下を目指せと夫を促し、国春を討ち取る。国春の側近小田倉則保(志村喬)は国春の息子国丸(太刀川洋一)を擁して、蜘蛛巣城の留守を預かる三木を頼るが三木は開門せずに大殿の遺骸と共に城に戻る武時を迎え入れる。評定で武時を押し武時は城主となる。武時は予言通り、三木の息子を世継ぎに迎えようとするが、浅茅は妊娠したからと反対。刺客に三木親子を討たせようとするが…。

富士山二合目の太郎坊に火山灰地に建てられたオープンセット。三階建てで御殿場からも見えるほどの大きさ。また門の内側も砧撮影所近くの農場にオープンセットを建てている。
北の館から見える畑の畦道を国春の軍が来る場面など、どの場面を見ても本物の迫力で迫ってくる。

 浅茅の発狂場面はわざと夜に撮影、練習を積んだ山田五十鈴を黒澤は絶賛している。また、ラストの武時に矢がいかけられる場面、弓道部に本当に矢を放たせ、後はテグスを使用して大迫力のシーンを生み出しており、三船はほんとに怖かったと酔って黒澤邸の周囲を徘徊したというエピソードがある。
 人間の妄執を描き出す黒澤さんらしい人間ドラマになっており、地元イギリスの批評家を始め、シェイクスピアの映画化として海外で高い評価を受けた作品だ。
 何度観ても圧巻。とにかく面白いし見せる。それこそが映画で最も重要な部分である。