[稲村ジェーン] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

力道の映画ブログ&小説・シナリオ

映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

桑田佳祐監督。康珍化脚本。猪瀬雅久撮影。桑田佳祐音楽。サザンオールスターズ主題歌。90年、東宝配給。

これ長いことソフト化されず我家もビデオしかないので、公開当時劇場で観た印象を思い出しながら書いてみる。
「暑かったけど、短かったよねぇー、夏」劇中清水ミサ演じる波子の台詞がCMに使われ、サザンの桑田が監督するということで話題になり興収18億の大ヒットした作品。
 評価は散々。ビートたけしを始め、音楽映画のはずなのに、すごく長く感じたとか、批判され、桑田自身出来に満足してなかったこともありソフト化が躊躇われていた。
 舞台は65年、鎌倉市稲村ヶ崎。東京オリンピックを直後にした時代を三人の男と一人の女性の青春映画として描いている。桑田は夜サーフィンをできないことを知らずに撮影、リアリティに欠ける部分もあるのだが、[ストレンジャー・ザン・パラダイス]に影響を受けたという桑田は何もなかった夏を表現しようとして、ファンタジーを挿入したり、苦戦していたことは見て取れる。伝説のサーファーでビーナスのマスター(伊武雅刀)の台詞にあるように[湘南?ここらでは誰もそんか呼び方はしないの。ここは稲村、稲村ヶ崎]というように桑田の拘りは珍の脚本の中に生かされていた。

1964年に行われた東京オリンピックの翌年、1965年の鎌倉市の稲村ヶ崎、変わりゆく時代の渦中を生きる若者たちのサーファーのひと夏。稲村ヶ崎に帰ってきたヒロシ(加勢大周)、伊勢佐木町のチンピラ・カッチャン(的場浩司)、ラテン・バンドのリーダー・マサシ(金山一彦)の前に横須賀の波子(清水美砂)というとびきりイイ女が現れ、波子を中心にヒロシ、マサシ、カッチャンに奇妙な友情が生まれる…。

  ダイハツのミゼットで千葉までサーフィンに行こうとするヒロシたち。あのロード・ムービー的な部分は[ストレンジャー]を参考にしていて、サーフィンに対しては[ビック・ウェンズデー]の影響を感じさせる。自分は茅ヶ崎に幼い頃住んでいたせいか、この映画の拘りはわかる。チェリオを飲み、マリンルックのTシャツ。時代を懐かしく再現しているところはいい。ラストで夢物語のようなファンタジーにしなければ、もっと面白い作品になっただろう。

 作品内に使用されるサザンオールスターズの楽曲は[希望の轍]を始め、最高の楽曲ばかりであり、本作のサントラはサザンのアルバムの中でも傑作の一枚。

 CSか配信で放送してくれれば再観したい一本だ。