[惑星ソラリス] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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アンドレイ・タルコフスキー監督・脚本。フリードリッヒ・ガレンシュテイン脚本。スタニスワフ・レム原作。ワジーム・ユーソフ撮影。エドゥアルド・アルテミエフ音楽。72年、旧ソビエト映画。

 DVDの録画にて最観。ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの[ソラリスの陽のもとに]から物語の枠を使用したタルコフスキー監督独自の理論が挿入されたSF映画であり、カンヌ国際映画祭審査員特別賞。日本では大幅に遅れ77年に公開されている。自分も公開時には観ておらず、二番館上映だったのか日劇文化で一年遅れで観た記憶がある。

惑星ソラリス探索中のステーション[プロメテウス]からの通信が途切れ、地球では会議が持たれている、帰還した調査員はソラリスの海の変化を訴え、街や赤ちゃんを具現化していると報告する。真実を確かめるべく、心理学者クリス・ケルビィン(ドナタス・バニオニス)はステーションに出発。科学者スナウト(ユーリー・ヤルヴィット)と天体生物学者サルナトリウス(アナトリー・ソロニーツィン)に会うがケルビィンに状況を話そうとしない。やがて、彼は科学者で友人だったギバリャンの自殺を知り、彼が残したビデオを確認する。その映像にはスナウトの部屋から出るのを見た少女が写っていた。翌朝、ケルヴィンとの確執から自殺した妻ハリー(ナタリア・ボンダルチュク)が現れ、ケルヴィンは心悩まされ…。

惑星を覆う海そのものが知性を持つ巨大な有機体であることがわかり、人間の心に読み取り、本物の人間に見せるようない者を送り込んでくるのだ。タルコフスキーは幻想と葛藤するケルビィンとハリーの様子を描き出しならがら、人間が経験する様々な問題を掘り下げていく。本作はキネマ旬報でも5位に選ばれ、タルコフスキーの存在を世界に知らしめる出世作になるのだが、最初に見た時はケルビィンに会いに来た帰還員が彼とぶつかり飛び出していく未来の地球を当時の東京の首都高速でロケされたものが使われていたことが印象に残るものだったが内容的にはよく理解はなされてなかったと思う。こうして見直してみると、作品世界が実に深く、ゆったりとしたタルコフスキー独自の映画世界が観る側に想像を喚起させ、味わい深い世界観が築かれていることがわかる。

またラストは衝撃的な結末が用意されていて、驚かされる。タルコフスキーの[鏡]で描いたテーマを再び、作品内に反映させているように感じさせる。傑作の一本。