[ワイルド・アット・ハート] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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デビット・リンチ監督・脚本・音楽。バリー・ギフォード原作。フレデリック・エルムス撮影。アンジェロ・バダラメンティ音楽。90年、アメリカ映画。

スカパー、ザ・シネマにて再観。90年のカンヌ国際映画祭にてパルムドールを受賞。セックスと暴力に塗られた男女の逃避行を描いたロード・ムービー。

デビット・リンチと言えば、歪んだ愛や倒錯した世界が得意で、本作にも主人公のセイラー(ニコラス・ケイジ)や恋に落ちるルーラ(ローラ・ダーン)、執拗にセイラーを付け狙うルーラの母親マリエッタ(ダイアン・ラッド)皆、イカれた人間ではあるが、驚くほどストーレートに純愛を描いているとも言える。このパターンは本作と[ストレイト・ストーリー]だけではないだろうか。

恋人とのルーラの母親マリエッタから恨みを買ったセイラーは差し向けられた刺客を殺してしまう。出所したセイラーを蛇革のジャケットを送り、迎えに行くルーラ。マリエッタが諦めないだろうと考えたセイラーは執行猶予を無視して、ルーラと共にカリフォルニアを目指して、逃避行を開始する。マリエッタは探偵のジョニー(ハリー・ディーン・スタントン)や他の人物にも声をかけ、殺し屋のボビー・ベル(ウィリアム・デフォー)も彼らを追うが…。

映画は全編に渡り、セイラーとルーラの濃厚なラブ・シーンが続き、その背後で母親が次々とそれを阻止すべく動いていく。やがて、マリエッタのセイラーに対する恨みの要因が明らかになっていく。セイラーも数奇な運命だが、セイラーも処女を叔父に奪われるなど、まともな生活環境にないことがわかる。後にリンチ作品[ツィン・ピークス]人気になるシェリリン・フェンやシェリル・リーなどが起用され、後から観ると楽しめるが、いい天使、悪い天使などを登場させたり、[ラブ・ミー・テンダー]を効果的に使用したり、他のリンチ作品では理解不能な世界観が多い中、本作は比較的、わかりやすく。ラストも熱情的な恋愛劇として描き出す。リンチにもこんな恋愛映画が撮れるのかと驚かされた作品。妖艶なローラ・ダーンが本格的に認知された映画でもある。