[きみの鳥はうたえる] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

三宅唱監督・脚本。佐藤泰志原作。四宮秀俊撮影。H i’spec音楽。18年、コピアポア・フィルム配給。

スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて再観。函館シネマアイリス開館20周年記念作品。[そこのみにて光輝く]の佐藤泰志原作の映画化でタイトルはこれも[ザ・ビートルズ]の楽曲から取られている。

最初観た時に判断に迷った作品で、いつか見直しようと思っていた。再観して感じることは[花束みたいな恋をした][愛がなんだ]と並ぶ傑作ということ。

登場人物はほぼ三人、主人公の僕(柄本佑)と静雄(染谷将太)は函館でルームシェアリングをしている。そこに本屋のバイト先で僕と知り合いになり恋仲になった佐知子(石橋静河)ガ転がり込んでくる。遅刻の常習の僕を面倒みたくれる店長(萩原聖人)。互いに必要以上に鑑賞しない現代の若者像。明け方までクラブで遊んで、バイトに通う何気ない日常が流れていく。佐知子は僕とセッキスして、かなり深い仲なのだが、元々は店長と付き合っていて、別れる決意を僕に告げる。しかし、僕は彼女を必要以上に拘束せず、佐知子は静雄とも飲み、キャンプにまで行き、そうした流れの中で佐知子よ気持ちは揺れていく。

物語の中で起きる出来事、僕を恨むバイト先の先輩と相容れず、ぶつかったことをきっかけに先輩森口(足立智充)は僕を襲撃する。また、キャンプに行った静雄と佐知子が留守の間に静雄の母親が訪ね、僕に来たことを彼に伝えるが、静雄が戻った日に倒れてしまう。母親の様子をみるために実家に帰った静雄。佐知子は僕に静雄と付き合うことにしたと伝える。

 元々付き合うことを決めたのも佐知子が僕に声をかけて120秒待ち、近づいてきたら動くことを決めた僕が戻ってきた彼女と付き合うことを決めたように、何となく流れる時間と運命のままに生きる僕、そして恋に対しては自分の意志を貫く佐知子。この映画のラスト、出会いのゲームを伏線として、受動で人生を生きてきた僕が初めて見せる能動、ここがいい。そして、佐知子の表情。突然切られるラスト。

どう展開するのかは観る側に委ねられるのだ。三宅監督の編集と構成が秀逸で、観終わったあとゾクゾクさせるような緊迫感を残して映画は終わるのだ。

佐知子の性格から考えると、僕が初めて取った能動がいい方向に向くとは思えないがそれを予感させるだけでも斬新で新しい青春映画のスタイルを感じさせる一作だ。