[ナイル殺人事件] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ジョン・ギラーミン監督。アガサ・クリスティ原作。アンソニー・シェーファー脚本。ジャック・カーディフ撮影。ニーノ・ロータ音楽。78年、イギリス映画。

スカパー、ザ・シネマの録画にて再観。リメイクの公開が遅れているため、オリジナルを久しぶりに観た。
日本では79年の正月映画として公開され、東宝東和によりサンディー・オニールが歌う[ミステリー・ナイル]を主題歌として、エンドロールに流したことで大ヒットした映画だ。原作は37年アガサ・クリスティが発表したエルキュール・ポワロシリーズの一作。この映画公開時にハードカバーで発売された。結末が若干違うが映画的にはこの方がベスト。

全編、ナイル、エジプトにロケーション。蒸気船まで作っている。金の掛け方が半端ではない。キャメラマンは名手、ジャック・カーディフ、壮大なエジプトの風景を見事に映画に写し出し、ロータの名曲がラストを飾るがこれだけは東宝東和版で観たいと思ってしまう。

さて、キャストだが、前作[オリエント急行殺人事件]を思い出して頂くと、イングリット・バーグマン、ローレン・バコール。ショーン・コネリー、ジャクリーン・ビセット、一枚看板で映画に出ていたトップスターだったのに対して、本作はポワロ役のピーター・ユスチノフも地味だが、その相棒レイス大佐役のデヴィッド・ニーブン、スカイラー夫人役のベティ・デイビス、スカイラーの看護婦バウァーズ役マギー・スミス。そして、主役とも言っていいジャクリーン役のミア・ファーロー。準主役級の役者に格落ちした感はあるが、そのメイドルイーズ役のジェーン・バーキン。作家サロメの娘ロザリーにオリビア・ハッセー、その恋人にジョン・フィンチが起用され、豪華。そして登場人物全員に恨みを抱かれ、親の莫大な財産を受け継ぐリネット役のロイス・チャイルズとジャン・マイケル・ビンセントに似てる、サイモン役のサイモンマッコー・サンデールはオーディションによる抜擢だった。

エルキュール・ポワロは全員に反抗の可能性があるとして、その過程を映画で再現してみせるが、ここは過程なので、編集してしまってよかったと思う。ポワロの謎解き部分だけ、再現すればいいこと。同じイギリス映画だが、[オリエント急行殺人事件]の重厚さがないのは、シドニー・ルメットとギラーミンの差と言っていい。ただ自分は映画的に重い前作より、圧倒的に本作が好きだ。ロザリー役のオリビア・ハッセーは脇役ながら、その美しさは健在。大空港シリーズのジョージ・ケネディまで出ていて、テンポがあって面白い。リメイクはいいがCGで仕上げてしまうのではなく、全部再現してしまうアナログ時代の凄さを存分に堪能できる映画だ。