[パリの灯りは遠く] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

力道の映画ブログ&小説・シナリオ

映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

ジョセフ・ロージー監督。フランコ・ソリナス、フェルナンド・モランディ脚本。ジェリー・フィッシャー、ピエール=ウィリアム・グレン撮影。エジスト・マッキ、ピエール・ポルト音楽。76年、仏伊合作。

DVDにて再観。アラン・ドロン主演。第二次大戦中のユダヤ人にから安く買い叩いた美術商が翻弄されユダヤ狩りの渦に巻き込まれていくミステリー作品。
ロージーは赤狩りにより追放され、ヨーロッパ資本で作品を撮っており[暗殺者のメロディ]など、以来のドロンとのコンビを組んだ作品であり、自己の赤狩りによる体験をナチスに重ねたような映画だ。主人公のロベール・クライン(アラン・ドロン)はユダヤ人がやむを得ず手放した美術品の商いで、若い娼婦ジャニース(ジュリエット・ベルト)を囲う裕福な暮らしをしている。彼のアパートにユダヤ人が連絡に使う[ユダヤ通信]が届き、不審に思ったロベールが調べていくと、同性同名の男がいることがわかる。その知人フロランス(ジャンヌ・モロー)からクラインの連絡先を聞き、追いつめていくのだが、友人のピエール(マイケル・ロンズデール)の忠告や協力でマドリードに逃げる予定だったが、もう一人の自分を求めて、大量のユダヤ人狩りが行われているパリに戻り…。

後半は同名のクラインの妄想に取り憑かれた主人公の焦燥感がよく出ていて、ニヤミスでクラインに会えない展開はロージーの演出の妙を感じさせる。ユダヤ人の弱味に漬け込んだ主人公がその罰を受けているような物語で、大きく物語が展開するわけではないので、映画的な面白さは乏しい。特にジャンヌ・モローなど贅沢な使い方で、出演シーンがあまりに短い。主人公の心理の崩壊を淡々と描き出してるサスペンス映画であり、地味な印象は拭えない。