[新世紀エヴァン・ゲリオン劇場版Air/まごころを、君に] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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庵野秀明総監督。26話監督・脚本。鶴巻和哉25話監督。白井久男撮影。鷺巣詩郎音楽。97年、東映配給。

スカパー、チャンネルNecoの録画にて最観。社会現象を起こした95年に放送された[新世紀エヴァンゲリオン]の劇場版第二作にあたる。初回放送時、制作が間に合わず、中途半端な形で終わった25話と26話を改めに制作し直し、本当に庵野秀明が描きたかったシリーズの結末を描いたことで話題になった。

劇場版第一作[シト新生]で最後まで描く予定だったものが制作が遅れて、本作の公開となった。

今、観ても壮絶な結末だし。唯一の友だった最後の使徒カヲルを失った碇シンジ(緒方恵美)は廃人同然になっていたのを、葛城ミサト(三石琴乃)は叱咤激励しながら、エヴァ初号機に乗せようとする。この別れのシーンが最高にいい。シンジにキスをして、全てを託し、すでに亡くなった恋人加持(山寺宏一)にこれで良かったのよね、と問いかける。この25話のミサトの最後は泣けた。ゼーレは自らの手でサード・インパクトを起こすべく、意見を異にした碇ゲンドウと冬月が指揮する特務機関ネルフ本部に総攻撃を仕掛けてくるのだ。

全身に大怪我負ったアスカ(宮村優子)、その裸を見て射精してしまうシンジ、このオープニングもかなり衝撃だっあが単身エヴァ二号機を操り、ゼーレの送り込むエヴァシリーズを迎えうつ。

ネルフの司令ゲンドウ(立木冬彦)はアダムを抱え、綾波レイ(林原めぐみ)とリリスの元に向かう。リリスを守る赤城リツ子博士の母親は娘を拒否、愛人であるゲンドウを選ぶ。
より人類が進化した形で保管しようとする人類保管計画。リリスは綾波と一体化しながら、エヴァを取り込んでいく。

物語
最後の使徒=渚カヲルは倒された。しかし、カヲルを自分の手で殺した現実に対処できないシンジは固く心を閉ざしてしまう。

そして約束の時が訪れる。ゲンドウらと完全に決裂したゼーレは自らの手による人類の補完を目指し、戦略自衛隊による攻撃をNERV(ネルフ)本部に仕掛けてきたのだ。戦闘のプロに抗う術もなく血の海に倒れていく職員達。その絶望的状況下でミサトは、シンジは、アスカは、レイは、生き残ることができるのか? そして人類補完計画とは?

人類の存亡をかけた最後の戦いが、今始まろうとしている。

まずTVシリーズの1話から24話をかなり深く観ておかないと、この作品は全く理解不能である。その24話あたりから、いくつかの場面を再構成しなが、25話は進んでいく。

最後は初号機に残されたシンジの精神をこじ開けながら、本作の結末は彼の意思に委ねられていく。人類をより良き種族として、改めに再生するという本作の発想は[伝説巨神イデオン]と同じであり、[イデオン]で花開かなかったものがやっとエヴァで認知されたといっていい。さらに本作では時代を象徴する親の離婚、子供の反発と心の閉鎖、現代社会が抱える問題を作品に取り込み、同じ境遇の現代っ子たちの心を掴んだことにある。しかも、本作が描き込む人間の確執は、主人公シンジの父親碇ゲンドウに対する反発。そのゲンドウの妻であり碇ユイの分身でもあるクローン綾波レイの存在。さらに赤城リツコ(山口由里子)に至っては、母娘でゲンドウの女だったことがわかる。親子、母娘、女の嫉妬、そうした醜い人間の確執と、抉り出されるような精神の崩壊。その表裏にあるドラマの深さは他のアニメは勿論、実写映画でもなかなか難しい人間の本質に迫ったとドラマはそうはない。

TVシリーズの中で描かれるアスカ、シンジ、ミサトの過去と現在を本作は掘り返しながら、突き詰め、遂にはシンジの精神に委ねていくのだ。シリーズの中にあったアットホームな雰囲気はすべて排して。究極の人間の在り方に迫るロボットアニメの形を借りた人間ドラマである。