[美女と液体人間] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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本多猪四郎監督。円谷英二特技監督。海上日出夫原作。木村武脚本。小泉一撮影。荒木秀三郎、有川貞昌特撮撮影。佐藤勝音楽。58年、東宝配給。



スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて再観。変身人間シリーズの第1作。本作も液体化する要因として、水爆実験を取り上げており、唯一の被曝国である日本のトラウマの大きさを感じさせる。劇中に登場する第二竜神丸はビキニ鑑賞における[第五福竜丸]事件をモデルにしているのは明らか。恋人が謎の失踪を遂げたことで、事件に巻き込まれていく美女役は白川由美で妖艶な美しさを感じさする。液体人間には化粧のベース素材の有機ガラスが使用されたが、これは後の『ウルトラQ』の『2020年の挑戦』などにも使用されているが本作はカラーなので。より生々しさを感じさせた。


小雨の東京。不思議な事件が発生した。麻薬を盗みとった一人の男が、盗品はもとより身につけていた衣服一切を脱ぎ捨てて跡形もなく消え去ったのだ。その男は、麻薬密売をしているギャング三崎(伊藤久哉)であることが判明。彼には、キャバレー「ホムラ」の人気歌手で千加子(白川由美)という女がいた。ある日千加子の前に、生物化学を専攻する政田(佐原健二)という学者が訪ねる。彼は、三崎が水爆実験の前後、海上にいたかどうかをたずねた。また、三崎が隠匿したと思われる麻薬の行方を追求するギャング団も千加子を狙っていた。その一人西山は、彼女のアパートに乗りこみ脅迫したが、彼も突如現われた人間状の形をした液体に溶かされ姿を消してしまった。千加子からその目撃した一瞬を聞いた政田は愕然とした。そして富永捜査一課長(平田昭彦)をある病院へ案内した。そこのべッドには、原爆症にやつれた二人の男が横たわっていた。彼らは水爆実験当時、南方海上で行方不明を伝えられた第二竜神丸とすれちがい、仲間とその船に乗り移ったが、人間の形をした生物のような液体に次々と倒され、二人だけようやく逃げ帰ったというのだ。奇怪な事件はこの“液体人間”なるものの仕業だった。捜査陣と科学者らは、特別火焔放射器で撲滅を企てた。その頃、政田の使いと偽って千加子を連れ出した麻薬団一味の内田(佐藤允)は、麻薬が陰匿してあるマンホールへ進んだ。麻薬と千加子をモノにしようと思ってである。一足ちがいとなった政田は現場へ急ぎ…,。


他の作品と比較するとキャスト的には豪華で、小澤栄太郎や岡本喜八監督作品では主役を務める佐藤允などもキャスティングされている。


液体人間については、劇中真木博士(千田是也)がカエルを使った実験で説明がなされるが、イマイチ目的が判然としない。また政田と千加子の恋愛をもう少し明確にした方が作品としては深さが出た。


それからガソリンを地下水に撒いて液体人間を退治するという対策の根拠がわからないが、核の灰を浴びても生き残っていくという設定にしては、疑問を感じた。


昭和33年公開のため、まだ一万円札はできておらず、劇中、ギャングの内田はこれを売れば5千円札でいっぱいと発言している。街並みを見るとオート三輪トラックが実に多いことに驚く。


本多猪四郎。『ゴジラ』