[男はつらいよ 噂の寅次郎] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本・原作。朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。78年、松竹配給。


スカパー衛星劇島の録画にて再観。シリーズ第22作。マドンナの大原麗子にとっては二本のうちの最初の一本。自分はこれ劇場公開で鑑賞したが、改めて40年ぶりに見直してみると、この脚本は完璧。寅地蔵の夢オチから始まって、話が転がるように展開。一切の無駄がない。緩急を入れるように笑いを挿入し、久しぶりに爆笑してしまった。例えば、最初に彼岸に寅次郎(渥美清)が柴又に戻るのだが、墓参りに出かけて墓間違い。次にタコ社長の自殺騒ぎで大喧嘩、このパターン19作目の『寅次郎と殿様』以来二度目。そして、大井川で大滝秀治演じる虚無僧に[女難の相が出ている]と指摘され、男にフラれたゲストの泉ピン子に出会う。さらにバスで再会した博(前田吟)の父親飄一郎(志村喬)に今昔物語で、諭された寅次郎がとらやに戻ると就職の斡旋所から紹介された早苗(大原麗子)と鉢合わせ、旅に出ようといた寅次郎は仮病で、救急車騒ぎ。単純だが、こうしたノリこそこのシリーズの持ち味。


旅先で偶然、博(前田吟)の父、飄一郎(志村喬)と出会った寅は、そこで、彼から人生のはかなさについて諭され、「今昔物語」の本を借りて、柴叉に帰った。その頃、“とらや”では、職業安定所の紹介で、荒川早苗(大原麗子)が店を手伝っていた。寅は帰るや否や、家族を集めて、飄一郎の受売りを一席ブツ。翌朝、修業の旅に出ると家を出ようとするところに、早苗が出勤して来た。彼女の美しさに一目惚れする寅だが、旅に出ると言った手前、やむなく、店を出る。通りを歩くさくら(倍賞千恵子)に出会った寅は急に腹痛を訴えるのだった。救急車で病院に担ぎ込まれ大騒動になる。早苗が現在、夫と別居中であることを聞いて、寅は内心喜びながらも、彼女を励まし、力づけた。彼女も寅の優しい心づかいに、思わず涙ぐみ、“寅さん、好きよ”とまで言うので一家は心配する。早苗は義兄の添田(室田日出夫)に夫の離婚届を渡された。高校で教師をしている添田は密かに彼女を慕っていた。暫くして、早苗の引っ越しの日、手伝いに出かけた寅は、そこで生徒を連れて働く添田を紹介された。気やすく早苗に話しかける寅に、撫然とする添田だった。やがて、そんな添田が、“とらや”に早苗を訪ねてきた。添田は外出している早苗を暫く待っていたが、意を決するように立ち上がると、手紙と預金通帳を、早苗に渡すように、寅に託して立ち去るのだが…,。


改めて見直してみると、この早苗の言い方だと寅次郎は勘違いしても仕方ないが、自分より不器用な添田に対して、グっと我慢して身を引く寅次郎。まさに『男はつらいよ』、よく出来ている。こうした隠れた名作があるから、このシリーズは奥が深い。


ゲストの泉ピン子は、TVの『ウィークエンダー』のレポーターで、人気になり抜擢。


また第8作『恋歌』以来の登場の飄一郎が博を訪ねるエピソードも実に感動的。


これはシリーズを通して観ている方には特にお薦めの名作。