[男はつらいよ 拝啓車寅次郎様] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本・原作。朝間義隆脚本。高羽哲夫、池谷秀行撮影。山本直純、山本純之介音楽。94年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて鑑賞。シリーズ第47作。タイトルは渥美清の主演映画『拝啓天皇陛下様』から取られており、劇中、満男(吉岡秀隆)の寅次郎宛の手紙で使用される。車寅次郎を演じてきた渥美清は、肝臓癌の肺への転移により、ドクターストップの中、出演を続けた。パターンは前後作の満男シリーズと同じで、寅次郎とマドンナで人妻の典子(かたせ梨乃)と満男と先輩の妹菜穂(牧瀬里穂)の恋が同時進行で描かれる。なお前作よりパターンだった夢オチはなく、寅次郎が出会う売れない歌手(小林幸子)を励ますエピソードがラストに繋がってくる。


地方都市の繁華街で歌う演歌歌手(小林幸子)の応援をした寅(渥美清)は、ふらりと柴又へ帰って来た。甥の満男(吉岡秀隆)は就職して半年が過ぎ、仕事にすっかり嫌気がさしていたが、そんな彼を寅はやんわり諭す。ある日、長浜市で家業を継ぐ大学時代の先輩・川井信夫(山田雅人)から誘われ、満男は休日を利用して地元の曳山祭を観に行った。そこで出会った信夫の妹・奈穂(牧瀬里穂)に町の案内をしてもらい、2人は急速に打ち解け合っていく。一方、寅も同じ長浜に来ていて、大きな撮影機材を抱えた宮典子(かたせ梨乃)がケガをしたのを助けた。年に一度撮影旅行に出かけるのを楽しみにしている典子と寅は周囲から見ると夫婦のように親しくなるが、ケガを聞いて典子の夫・幸之助(平泉成)が迎えに来て.典子は突然帰ることになった。何も言わず、送り出す寅。一方、地元の曳山祭りたけなわの夜、奈穂と二人きりになり、彼女に何げなく恋人はいるかどうか聞く。そんな満男の姿を見かけた寅は、満男にひと言声をかけて励ました後、人混みの中に消えていった。その晩、信夫から驚くべき相談を受けた満男は…,。


まず満男の会社の専務が携帯電話を使っており、時代の変遷を感じさせる。このシリーズはやはり公衆電話の時代、昭和だからこそ成り立ってきた物語であり、携帯で人々が簡単に話せてしまうのならば、例えば人が居なくなったと言って、寅次郎が人情でひと肌脱いで、地方まで探しに行くという設定はあり得なくなる。やはり、映画というものはその作品が製作された背景と共にあるわけで、さすがに長く続け過ぎたことを考えさせられてしまう。


寅次郎の相手は人妻であり、彼の性格からして、そうした制約を破るような道に外れた行動をするばすもなく、この結末は納得がいく。送ってきた満男を江ノ電の駅『鎌倉高校前』で諭し、去っていく、珍しい別れの場面が挿入されていた。


ダブルマドンナのひとり牧瀬里穂は90年代に数々の作品に抜擢され、売り出し中の起用。マドンナに関しては、シリーズの終焉も迫っていることがわかるからか、この頃は順番待ちのような状況だったらしい。


山田洋次。[たそがれ清兵衛]