[男はつらいよ 寅次郎わが道をいく] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本・原作。朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。78年、松竹配給。


スカパー衛星劇島の録画にて再観。シリーズ第21作。SKD(松竹歌劇団)の全面協力によりマドンナに木の実ナナをさくらの旧友紅奈々子役で起用。歌と踊りを披露する。これも劇場で観て以来だったが、まず夢オチで第3惑星人であることを明かした寅次郎がUFOに乗り自分の星に戻るというもの。この年公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』がいかに周囲に影響を与えたのかを如実に伝えるものであり、寅次郎(渥美清)が夢から覚めるとラジカセから社会現象にまでなったピンクレディーの『UFO』が聞こえてくる。山田洋次監督はこうした文化的な背景を作品に取り込んでいることから、この映画を観ただけでその年の流行が伝わり、懐かしい気分にさせられた。

また田の原温泉で寅次郎が出会うフラれてばかりの整備工留吉(武田鉄矢)が『スターウォーズ』の帽子を被っているなど、この年を席巻したSF映画ブームがいかに凄いものだったかがわかる。


初夏の柴又に、寅次郎(渥美清)が戻ってきた。風邪で寝込んでいたおいちゃん(下條正巳)は、その寅に俺も年だ、店を継ぐように相談する。寅次郎は調子に乗り、破天荒な経営論を語り、みんなに馬鹿にされて、タコ社長(太宰久雄)と喧嘩、寅はまた柴又を後にする。九州は肥後の田の原温泉にやってきた寅は、そこで後藤留吉(武田鉄矢)という若者と知り合う。幼ななじみの芋娘にふられ気落ちしたところを寅に励まされた留吉、すっかり寅を心酔、寅もつい長逗留しで宿代もたま流行、さくら(倍賞千恵子)にSOSの手紙を書く。寅次郎は柴又に戻ってきた。その時、さくらの学生時代の友人紅奈々子(木の実ナナ)が訪ねてきた。彼女はSKDのスターであり、二人ともSKDに入るのが夢だった。今、SKDの花形スターになっった奈々子を知った寅は一目惚れ、浅草国際劇場に通いはじめた。ツユに入る頃、留吉が上京してきた。国際劇場に案内された留吉は、踊り子の富士しのぶ(梓しのぶ)に一目惚れしてしまう。留吉は浅草に残り、トンカツ屋に就職して、国際劇場専門の出前持になってしまった。ツユが明ける頃、奈々子はまたさくらを訪ねた。彼女は照明係の宮田隆(竜雷太)に恋をしており、結婚するか、舞台ひと筋に生きるかを、さくらに相談に来たのだ。踊りをえらんだかに見えた奈々子だったが…,。


木の実ナナ演じる奈々子は直情型だけに、それを励まして一喜一憂する寅次郎はかなりショックを受ける結末を迎える。彼女の最後舞台を見守る姿は、観る側に迫ってくる。この時代までの『男はつらいよ』はまさにそのタイトルを実感させる作りになっている。


留吉を演じた武田鉄矢は山田洋次監督の大ヒットした[幸福の黄色いハンカチ]からのスピンオフ的な使い方で、前後する『男はつらいよ 翔んでる寅次郎]では同映画から桃井かおりが抜擢されている。しかし、この留吉役はあまりに同映画の花田鉄矢のままであり、本作を観たときから、工夫のなさに落胆したことを思い出した。


山田洋次。[幸福の黄色いハンカチ]