[男はつらいよ 寅次郎心の旅路] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・原作・脚本。朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。89年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて再観。寅さんが海外に行く作品とリクエストがあったので、見直してみた。第4作[新男はつらいよ]で寸前で中止を余儀なくされた寅次郎の海外旅行が、90年代の声を目の前にして、実現したのが本作。シリーズ第41作。満男を主役に据えたシリーズを次作に控えて、ウィーンに海外ロケを敢行、海外旅行に一般庶民が出かける時代を迎えたことを象徴するような作品になった。マドンナは[口笛を吹く寅次郎][知床慕情]に続いて竹下景子が三度目の起用、それぞれに違い役を演じているのだが、本作では海外の映画のようなドラマチックな物語が用意された。


寅次郎(渥美清)は宮城の旅の途中、自殺を図ろうとしたサラリーマンを坂口(柄本明)を助ける。彼は、寅に心酔。旅を続けたいので、お礼にウィーンへ連れていくという。さくら(倍賞千恵子)たちの反対で一時は止めようとするが、坂口の説得で結局は行くはめになった。ウィーンに着いた二人だが、趣味が合わず別行動。坂口は美術館を見学し、一方、寅は公園で迷子になり、にホテルへ帰れなくなり、偶然に知り合った江上久美子(竹下景子)という美人の日本人ツアーコンダクター率いる一団についていってしまった。ホテルの名前を思い出せない寅に困って、ウィーンでの生活の長い年輩のマダム(淡路恵子)と呼ばれる日本人女性に助けを求めた。坂口は寅がホテルに戻ると一人で舞踏会へ出かけていき、そこでウィーンの美女とダンスを踊った。一方寅は久美子の休日に二人でドナウ川の辺に出かけた。久美子は故郷を思い出し日本に帰る決心をするが…。


海外であろうと我が道を行く寅(笑)、当たり前だが、渥美も晩年に入り、昔のようなドタバタ劇にはならない。寅次郎と坂口ふたりのドラマが同時進行の形で進み、それぞれに笑いと心温まる物語が展開される。久美子の面倒を見るマダム役の淡路恵子も[知床慕情]以来の起用で、竹下とはまた同じ作品での共演になった。ハイセンスな雰囲気がある淡路にはこの役はハマり役で、寅次郎に救われながらも海外では相容れず、その行き違いぶりで笑わせる。柄本明演じる坂口と共に本作で重要な役割を果たしていた。結末は前述したようにドラマチックな展開が待っている。


ドナウ河のほとりに佇む寅次郎、何とも不釣り合いだが、その違和感による笑いも本作の見所だ。


山田洋次[男はつらいよ][家族]など。