[ベルリン天使の詩] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ヴィム・ヴェンダース監督・脚本。ペーター・ハントケ脚本。アンリ・アルカン撮影。ユルゲン・クニーパー音楽。87年、西独、仏合作。


スカパー、ザ・シネマの録画にて再観。ブルーノ・ガンツが亡くなり、追悼にするつもりだったが、ディスクが見つからず、今になった。天使がサーカスの女性に恋心を抱き、下界に降りてくる。天使の視線を使って過去、現在のドイツを見つめ、人間の存在の尊さを示唆してくるヴェンダース珠玉のファンタジー。87年カンヌ国際映画祭監督賞。キネマ旬報ベストテン外国映画第3位。


ベルリン。廃墟の上から人々を見守っている天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)がいる。天使の耳には、地上の人々の内心の声が聞こえる。天使の姿は子供たちには見える。コロンボ刑事役で親しまれているアメリカの映画スター、ピーター・フォーク(本人)がこれからベルリンで撮影に入る映画の脚本を読んでいる。色々な街の人々の肉声。ダミエルは、親友の天使カシエル(オットー・ザンダー)と、今日見た自然や人々の様子について情報交換し、永遠の霊であり続けながら人間ではない自分に嫌気がさしている。図書館は天使たちの憩いの場だ。老詩人ホメロス(クルト・ボウワ)が失われた物語を探している。サーカスに迷いこんだダミアンは、空中ブランコを練習中の美女マリオン(ソルヴェイグ・ドマルタン)を見て一目惚れをする。橋のたもとで起こった交通事故で死にかけている男に息をふきかえさせるダミエル。カシエルは、ホメロスにつき添ってポツダム広場を歩いている。ピーター・フォークの出演しているスタジオには様々な人がいる。ダミエルはカシエルを呼んでサーカスの公演を見にゆく。マリオンを見つめるダミエル。最後の公演を前に死の怖れを語るマリオンの肉声。ロック・コンサートで踊るマリオンの手にふれるダミエル。夜明け、ピーター・フォークはダミエルに人間になることをすすめる。壁をこえてノーマンズランドを散策するダミエルは、マリオンへの愛をカシエルに告白する。人間に恋すると天使は死ぬ。彼はカシエルの腕の中で死んだが…。


映画の前半、天使側の視点で描かれている部分はモノクロで、人間世界をカラーで描き分ける。洩れ聞こえてくる西ドイツの庶民の悲痛の恋、様々な人々の声はやがて、人間や世界の始まりまで遡り、ドイツの歴史も振り返っていく、こうした設定が本作をただのファンタジーに終わらせていない所以であり、タミエルに下界に降りる決断をさせる存在として、ピーター・フォークを本人役として起用するアイディアが秀逸。人間世界に降りたダミエルとマリオンの邂逅するシーンは最高のラブストーリーに仕上がっていた。



ヴィム・ベンダース[パリテキサス]など。