[ディストラクション・ベイビーズ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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真利子哲也監督・脚本。喜安浩平脚本。佐々木靖之撮影。向井秀徳音楽。16年、東京テアトル配給。


スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて鑑賞。昨年のキネマ旬報ベストテン4位。主演の柳楽優弥が主演男優主演賞、小松菜々、村上虹郎が新人賞を受賞した作品。真利子監督のメジャーデビュー作で、愛媛県松山市のバーのマスターから聞いた実話の映画化。無差別暴力を題材にした映画というと、韓国の[息もできない]や園子温監督の[冷たい熱帯魚]があるので、斬新さは感じなかったが、こういう映画を観ていつも思うが、やはり人間の常識を逸脱した存在を肯定するわけにはいかないし、無差別のバイオレンスというものにも懐疑的にならざる得ない。


愛媛県松山市の小さな港町・三津浜にある海沿いの造船所で、芦原泰良(柳楽優弥)と弟・将太(村上虹郎)の兄弟は責任者近藤(でんでん)の元、二人きりで暮らしている。泰良は喧嘩に明け暮れていたが、ある日、三津浜から姿を消す。泰良は松山の路地裏で強そうな相手を見つけては喧嘩を仕掛け、打ちのめされても食い下がっていた。北原裕也(菅田将暉)はそんな泰良に興味を持ち、共闘をもちかける。二人は無差別に通行人に暴行を加え、車を強奪し、乗り合わせていた少女・那奈(小松菜奈)と松山市外へ向かう。その頃、自分を置いて消えた兄を探しに、将太も市内へとやってきていた……。


兄の暴走はやがて、北原を巻き込み、さらには那奈を連れ去り、連鎖しながら、ネットで拡散、それを見た弟の精神まで影響を及ぼしていく。いかにも現代的な設定であり、理由付けができないからこそ怖い。この話が実話なのだとすれば、人間の根源を否定されているような物語であり、観る側が改めて考えなければならない問題提起だ。


映画の好き嫌いは別にして、柳楽優弥は子役として[誰も知らない]以来、注目を集める作品であり、鬼気迫る迫真の演技だった。東京テアトルという単館独立系の配給の割には菅田将暉、池松壮亮、などキャストも豪華であり、手作り的な映画ではなく、松山にロケを敢行した、きちんとしたメジャー映画になっていた、


かなり激しいバイオレンス映画であり、それがダメな方にはお薦めできないが、現代の病巣を確かに活写した映画ではある。



真利子哲也。[イエロー・キッド]など。