[カメラを止めるな] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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上田慎一郎監督・原作・脚本。和田亮一脚本。曽根剛撮影。鈴木伸宏&伊藤翔、磨、永井カイル音楽。17年、ENBEゼミナール=アズミック・エース配給。


日テレ地上波にて鑑賞。監督&俳優養成スクールENBEゼミナールの『シネマ・プロジェクト』第七弾作品。2017年国内、海外で先行上映で話題になり、昨年6月国内で凱旋上映したところ31億の興収を上げ、話題になった作品。ノーカット上映だったので早速、鑑賞。


しかし、この映画、内田けんじ監督の[運命じゃない人]のパターンにそっくりで斬新さは全く感じなかった。


最初に[ONE CAT OF DEAD]37分、ワンカットのゾンビドラマを見せ、第二幕でそれが確定する過程、そしてクライマックスはその裏側を描いていく。確かに緻密に計算され、その裏側のトラブルの設定などは面白いしよく出来ているが、そのまで絶讃するほどの出来だろうか?同じパターンで製作された内田けんじが第14回PFFで一躍メジャー監督に昇格することになる[運命じゃない人]を最初に見た時の衝撃と比較すると、この程度かとがっかりした。



ゾンビ映画撮影のため、山奥にある廃墟にやってきた自主映画のクルーたち。日暮監督(濱津隆之)主役の松本逢花(秋山ゆずき)に本物を求めてなかなかOKを出さず、ついに42テイクに至る。と、本物のゾンビが現れ撮影隊に襲いかかった。次々とクルーの面々はゾンビ化していくが、監督は撮影を中止するどころか嬉々として撮影を続行。37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビムービーを撮った彼らとは……。


後半のアクシデントの付け方は三谷幸喜監督の[ラジオの時間]だし、この監督のオリジナリティを感じられない。ハンドカメラを片手に撮っていくスタイルは、いかにも低予算のインディ、ジャンク・フィルムでしかなく、本当の映画好きなら、この映画や監督を絶讃することはない。実際にキネマ旬報ベストテンでは、10位からも漏れている。それは映画評論家ならば、この映画がモチーフにしている作品を観ているはずだからであり、むしろこの映画を楽しんでるのは、過去にあったこの手のスタイルの作品を観ていない人だから、楽しめるのだ。


この上田慎一郎という監督、本当の評価は次作で、面白い作品を撮れるかを観てから評価しても遅くはない。年末、[紅白歌合戦]とか様々なバラエティ番組に出てきて、意味なくカメラを振り回してみせる馬鹿ぶりを見るにつけ、一発屋に終わるだろうという思いを強くした。


ぜひ、この映画を観て喜ぶ前に内田けんじ監督の何作品かをご覧頂きたい!遥かに緻密でよくできた傑作揃いだからだ。