[イナゴの日] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  ジョン・シュレシンジャー監督。ウォルド・ソルド脚本。コンラッド・L・ホール撮影。ジョン・バリー音楽。75、アメリカ映画。

 野良犬さんより、シュレシンジャーの作品では見ておいた方がいいというアドバイスで見ました!

 シュレシンジャーらしい作風。実にシュールな作品に仕上がっている。39年あたりのハリウッドを舞台に、一躍スターになれる甘い密に群がるイナゴの如き人々をアイロニカルに見つめ、アメリカ映画社会の内側を痛烈に風刺して見せた問題作。
 衝撃的な場面がいくつかある。フェイ・グリーナー(カレン・ブラック)というスターを夢見るエキストラ女優に魅いられた二人の男美術部のトッド・ハケット(ウイリアム・アザートン)と田舎町アイオワ出身の経理事務員ホーマー・シンプソン(ドナルド・サザーランド)の悲劇的な末路。特に、セシル・B・デミル[海賊]の完成プレミアで起こる悲劇。更にそれがトッドにもたらす衝撃のラスト。
 バンプ役のカレン・ブラックの妖艶な魅力と、相変わらずの怪演を見せるドナルド・サザーランドの存在感に圧倒されてしまう。

 物語。38年エール大学の卒業したトッドは大手映画会社の美術部にに就職が決まり、ハリウッドにやって来る。サン・ベルドゥといい安下宿には庭一つ隔て、グリーナー父娘が住んでいた。娘・フェイは明日のスターを夢見るエキストラ女優。ボーイ・フレンドのアールと自分の主演映画に行くので、一緒にどうかと誘われたトッドはアールの対抗心を感じながらも、完全に彼女に魅了される。
  彼女の父ハリー・グリーナー(ハージェス・メレディス)は元ボード・ビリアンの小人。今は“奇跡”という洗剤を売っている。ある日、アイオワ出身の自己主張出来ないホーマー宅で営業中に倒れ、フェイが引き取りに来て、彼も魅了される。
 トッドは大学の先輩美術監督のクロードに取り入り、[ワーテル・ローの戦い]の美術の仕事を得る。しかし、しきりに挑発的なフェイは最後まで、トッド体を許さず彼はフラれ、彼女は何と干渉しない条件付きで、彼女の父に新興宗教を斡旋するも救えず、葬式に顔を出したホーナーと同居を始めるのだ。しかも、アールと闘鶏の得意な友人ミゲルまで引き込んで。
 美術部ではエキストラに事故が起こり、フェイを案じたトッドは駆け付けるが、クロードは全く意にも介していない。 辛辣な現実は続き、人のいいホーナーは金髪の少年アドミールにまで馬鹿にされ、デミルの新作のプレミア会場で、田舎に帰ることをトッドに告げるが、少年の執拗な挑発が悲劇を生む…。

 フェイの父が新興宗教の道具に狩り出される場面や、トッドが浮浪者キャンプに行く場面、酒と恐らくは麻薬を感じさせる表現は[真夜中のカーボーイ]にも見られ、まるで、70年代を連想させシュレシンジャーらしいアイロニーを感じさせる。さすがに、ニュー・シネマの監督だけに、単純な内幕暴露物に終わらせず。二つの時代を重ねて描きながら、ハリウッドの暗部を表現するアイディアが鋭い感性を感じさせる。
 まさにカルトでカオスを思わせる怪しい映画に仕上がっていた!