[情婦マノン] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督・脚本。アウ゛ェ・プレウ゛ォー原作。ミッシェル・フェリ脚本。アルマン・ディラール撮影。ポール・ミスラキ音楽。48、フランス映画。

 廉価版はIVCより発売され、購入しようとしたら、原盤が1000円で入手できた。画質は良好。

 十八世紀のプレウ゛ォーの作品を戦争直後、開放直後のフランスに置き代える発想がいい。戦後の混乱期が舞台のために、贅沢のために身を売ることをいとわないマノン(セシル・オーブリー)と彼女の心を繋ぎ止めようとして、破滅の道を選択してゆくロベール(ミッシェル・オークレール)の物語が、よりリアリズムを持って伝わる。
クルーゾーは、セシル・オーブリーというキュートな女優の小悪魔的な魅力をいかんなく引き出し。マノン・レスコーのロベールに対する深い情愛が映像から、痛烈に伝わってくる。
[あなたに抱かれて死にたかった]等、セリフの一つ一つまで練り込まれた脚本が見事。また、二人が逃げて上陸するパレスチナの海岸。その熱情と波乱を象徴するような空、怪しい太陽、雲を鮮やかに捉えるディラールのキャメラを称賛したい。

 物語。イスラエルに向かうユダヤ人の亡命者に紛れて、二人の密航者が捕まる。殺人を犯してたと言うロベールが船長に語る事情説明で映画は、フラッシュ・バックにて語られる。
 44年。開放間近のフランス。ロベールはレジスタンスに加わり、ドイツ人と密通した罪でリンチに合いそうだった娘・マノンを救う。当初、自分の思想から許し難いと感じたロベールだったが、深い口づけにより、マノンと恋に落ち、二人は逃亡、婚約する。
 マノンの兄レオン(セルジュ・レジアニ)を頼りパリに来た二人。レオンは、闇の仕事で羽振りがいい。かたぎな仕事を選び田舎の暮らしをしたいロベールに対し、一度、華やかな街を体験したマノンはパリを離れたがらない。レオンは自分の利権も絡み、マノンを操り、高級娼館で働かせる。不審に思ったロベールは現実を知り、マノンの首を絞めるが、自分の想いの強さに気付き、マノンの心を繋ぎ止めようと、闇の仕事をすりようになる。
 やがて、レオンは金吊るの男にマノンを嫁がせ、ロベールを別れさせようとした為、ロベールはレオンを絞め殺し、リヨンから列車に乗る。彼を愛するマノンは後を追い船に。
 身の上話を聞いた船長は、彼等を逃がし、ユダヤ人たちとパレスチナの海岸に下ろす。
 しかし、砂漠の中、対抗するアラブの一団が襲い…。
 最も有名な、撃たれたマノンを逆さ吊りに歩く場面はまさに衝撃。前のオアシスにおける楽園のような描写との対比で、その落差があるために、その悲惨さは浮き彫りになる。だが、マノンを砂漠に埋めるロベールからは、[やっと僕だけの物になった]。狂おしいばかりの情愛を感じ取らせるクルーゾーの傑作。
お薦めです!