[甘い生活] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

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  フェデリコ・フェリーニ監督、原案、脚本。エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ、ブルネロ・ロンディ脚本。オッテロ・マルテッリ撮影。ニーノ・ロータ音楽。59、イタリア・フランス合作。

 先週のマキャさんのオススメ映画にコメントすべく、フェリーニの未見の作品を借りたが見きれず。今日見た。この作品は、リバイバルもなく、見ないままだったのだが、ネオ・リアリズモの時代から、戦後の急速なイタリアの復興の元、自らの撮影スタイルを変化させていったフェリーニの傑作であることがわかる。
 特にストーリーに繋がりがあるわけでもなく。作家志望の記者・マルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)の自由奔放な恋愛を綴っているが、まさに主役は、急速な高度経済成長を遂げる退廃したデカダンスと無気力が漂う、ローマその物なのかも知れない。

 物語。作家志望のマルチェロは社交界のゴシップ記事を狙うトップの新聞記者。カトリックは巨大なキリスト像をヘリコプターで運びその力を誇示している。
 豪華なナイト・クラブで大富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)の気まぐれに突き合うマルチェロだが、家では愛人エンマ(イウ゛ォンヌ・クルノー)が自殺未遂。
 懲りないマルチェロはアメリカの女優シルウ゛ィア(アニタ・エスバーグ)を誘いトレウ゛ィの泉で戯れ、殴られる始末。
 ローマ郊外では奇跡が起きるとされ、聖母の降臨を信じるエンマ。二人は友人スタイナー(アラン・キューニー)のパーティーに参加、その暮らしぶりを羨むが、スタイナーは奇跡に関わる子供を道ずれに自殺。マルチェロは全ての理想を失い、益々、狂乱に興じていく…。

 オープニングの巨大なキリスト像のヘリコプターによる移動は、驚愕させらる。世俗化され、見世物化された宗教を象徴、ラストの怪魚は腐敗した社会のデカダンス的な象徴。 冒頭でヘリの音に掻き消されるマルチェロの口説きが、ラストの少女の届かない囁きに繋がる。堕落した暮らしを送るマルチェロにとって、もはや天使の声すら、届かない失った物の大きさを物語るシンボライズされた構造は、フェリーニの天才ぶりを感じさせる。
 何と言っても美しいのがマルチェロに[君は全てだ。神の創り給うた最初の女だ。母であり、妹であり、天使で悪魔で土地であり家だ]とまで囁かせるシルウ゛ィアを演じるアニタ・エスバーグの奔放な妖しい美しさ、まさに[甘い生活]を象徴していた。

フェリーニの才能を存分に感じさせる作品です!