ジョゼ・ジョウ゛ァンニ監督・脚本。ジャン・ジャック・タルベス撮影。フィリップ・サルド音楽。73、フランス・イタリア合作。
ケイトさんのドロン祭りに参加します。個人的には大ファン。シネマライフの方にトピ立てしてあるので、そちらも宜しく。
まずDVDの解説・杉原賢彦氏によると、本作のアイディアは、68年10月にドロンのボディ・ガード、マルコウ゛ィッチが他殺され、ドロン自身が厳しい警察のマークにあった体験が元になっているとのこと。さらにリアリティを求めたドロンは、元受刑者で獄中体験のあるジョバンニを[ラ・スクムーン]を見て起用を決めたという。劇中、警察のきついやり方に絶望した受刑者が首を吊る場面等は、彼の体験が生かされたものらしい。
保護監察司・ジュルマン(ジャン・ギャバン)の計らいで、恩赦に合わせて出所を許された銀行強盗犯の首謀者・ジーノ(アラン・ドロン)の更正と転落を通じ、官憲への疑問を投げ掛け、凶悪犯罪が横行し、死刑執行が気運の盛り上がりを見せたフランス社会への痛烈な批判が受け取れる。
物語。保護監察司ジェルマンは、刑務所での模範ぶりから、かって強盗犯の首謀者だったジーノの釈放を決める。ジーノは、パリ郊外のモーという小さな町で、献身的に尽す妻・ソフィ(イラリア・オッキーニ)の店で働き、ジェルマン一家とは家族ぐるみで付き合い、昔の仲間・マルセル(ウ゛ィクトル・ラヌー)の誘いも寄せ付けず、幸せな日々が続いたが、不幸な事故で、ソフィーが亡くなる。 それでもジュルマンは町工場に仕事を斡旋、彼の能力で経営者には気に入られ、新たに恋人・リューシー(ミムジー・ファーマー)を得て、順調に見えたジーノの人生だったが、彼を逮捕したゴワトロー警部(ミッシェル・ブーケ)との再会が運命を狂わせていく。ジーノに悪印象しかないゴワトローは、彼をしつこく誘うマルセルとの会っている場面に遭遇、ジーノをしつこく追い始め…。
ゴワトロー演じるミッシェル・ブーケの冷徹ぶりも見事だが、圧巻なのは、ブーケが逮捕され、刑務所でジュルマンと対峙する場面から、裁判、最後の瞬間までを手際良く見せ切るジョバンニの演出の手腕もあり、人間の持つ怒り、悲しみ、弱味を絶妙の演技で表現して見せるドロンの演技の素晴らしさである。
[地下室のメロディー]より十数年、ドロンがギャバンを越えたことを感じさせるクライマックスだった。
これを気に入ったドロンは、この後、ジョバンニと来んで[ル・ジタン][ブーメランのように]という作品で、国家権力の横暴を批判する秀作を続ける。この二本を僕は封切りで見たが、合わせてお薦めしたい秀作です!
これは紀伊国屋版のDVDを始めて購入、そのデジタル・リマスターの美しさに驚きました!