[椿三十郎] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  黒澤明監督・脚本。山本周五郎原作。小國英雄、菊島隆三脚本。小泉福造、斎藤孝雄撮影。佐藤勝音楽。62、東宝。

 小林桂樹さんが亡くなった。主役の作品を追悼としたかったのですが、生憎我が家にソフトがなく。ありきたりですが本作です。
 生前インタビューで本作の原作[日日平安]の主役は僕だからと自慢気に語られていたこと、思い出す。
 元々、黒澤は堀川弘通監督用に原作に忠実な脚本を書いたのだが、東宝が地味ということで難色を示し、ヒットした[用心棒]の続編をという要望に答えて制作されたのが本作。

 物語は皆さんご存知と思うので簡潔に書く。
 ある城下町。井坂伊織(加山雄三)を中心とした九人の若侍が藩の汚職と粛清を城代家老睦田(伊藤雄之助)に意見書をさし出すが受付られず、大目付菊井に諭され集まっていた。
 だがその社殿にいたよれよれの紋付き袴を掃いた浪人者(三船敏郎)は、睦田こそ本物で菊井が黒幕だと諭す。
 たちまち社殿は菊井の手の者に囲まれ、一人でかたずけた浪人者は若侍達に手を貸すことになる。
 睦田はすでに連れ去られ、夫人(入江たか子)と娘千鳥(団令子)を助け出し、若侍の一人の屋敷に匿う。この屋敷は黒幕の一人黒藤(志村喬)の隣で、通称椿屋敷と呼ばれ、夫人に名前を聞かれた浪人者は椿三十郎と名乗った。
  睦田の隠し場所を探るべく三十郎は、敵方の用心棒室戸半兵衛(仲代達矢)を訪ね。見方になるフリをする。 しかし若侍達は三十郎を信用せず、大失態。三十郎は叱責する。
 そんな折り、夫人が椿屋敷から意見書の切れ端を見つけ、隠し場所は黒藤屋敷と決まる。敵を誘き出し、椿を合図に屋敷に乗り込むことになるが……。

 小林演じる木村は敵方の侍ながら若侍方に共鳴、自ら人質になり意見する飄々とした役で、原作の主人公の匂いを残した彼らしいハマリ役。

 映画は三十郎が若侍達の指南役となりながら、夫人にはその生き様を諭されるという図式になり、黒澤明のポリシーが感じられる。
  やはり最大の見せ場は、ラストの三十郎と室戸の一騎討ち。息詰まる緊迫感の中。居合い一閃勝負は室戸の凄まじい血飛沫となって決まる。

  人間は動脈を切られると血は飛び散るということでポンプを使用する凄い迫力。
 二転三転する脚本。椿を合図にする小物使いの巧みさ。
 佐藤勝の三十郎のテーマも抜群のカッコ良さで、三船の殺陣はまさに圧巻。日本屈指の娯楽時代劇。

 御覧になったことがない方。お薦めします!

 DVDはレンタルにあります。
 黒澤明。[七人の侍][生きる]他。