[千年の祈り] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  ウェイン・ワン監督。イーユン・リー原作・脚本。パトリック・リンデン・マイヤー撮影。レスリー・バーバー音楽。07、日米合作。

  09年11月に恵比寿ガーデンシネマで公開された[スモーク]のウェイン・ワン監督の新作。Cecilさんのお薦めで早速鑑賞。

 アメリカで一人暮らす娘を心配してはるばる北京から父親が訪ねてくる。異文化の中で浮き彫りにされるアジアの繊細な心を情感豊かに描き出す秀作。

  妻に先立たれ、北京で暮らす父親シー(ヘンリー・オー)は、夫と別れアメリカで一人暮らしをする娘イーラン(フュイ・ユー)を12年ぶりに訪ねる。娘のいく末を心配した父親は、毎晩、自慢の料理で仕事で遅い娘を待つ。
徐々に明らかになる父親の過去。公園で知り合ったイラン人のマダムと片言の英語でスキンシップを計りながら、互いの心情を語る。娘の暮らす国を少しでも理解しようと英語を書き取る父。
  遂に娘は夜帰らず、心配した父親は娘の職場を訪れるがIDもなく入れない。
 娘は父親にアメリカを見せたいとツアーを用意していたが、ロシア語の教師と不倫をしており、帰ってきたところを問い詰める父親に積年の思いをぶつけらる。そこで父親が語る真実とは?

 中国のことわざ、“修百世可同舟、修千世可共枕”(同じ舟で川を渡るには100年、枕を共にするには1000年祈らねばならない)が物語に生かされている。
 人と人の出会いは、天が定めた運命でもなければ、偶然でもない。すべては長く深い祈りの末の必然。親と子供の縁も同様。長い祈りの積み重ねだからこそ、何度ひびが入っても、必ず修復出来る。 心に深く染みることわざだ。
  北京生まれの作家、香港出身の監督。アメリカという異国で活躍するコンビだからこそ、そこで失われたものの大切さを描ける。
 アメリカ人のようにストレートに物事をぶつけ合う人種と違い。アジアの人間は物事を遠回しに時間をかけて伝える奥ゆかしさを美徳と考えている。 長い年月、親子の間にあったわがかまり。それを12年ぶりに向き合うことで、解消し、その絆の大切さをしみじみと感じさせる映画だ。

 パトリック・リンデン・マイヤーのカメラが良い。自然光を取り入れた風景描写を背景に親子の再生のドラマを優しく見つめる。

  ウェイン・ワンは、最後の父親の告白を真ん中で仕切った二つの部屋に父と娘を置くことで、その確執を象徴する。会話が途切れがちになる食卓。また、過酷な結末が用意されているイラン人のマダムとのやり取りや娘との関係の再生が描かれるベンチ等、小道具の使い方も抜群に上手い。

 何とも言えない父娘がラストで見せる微笑みが、長い心の確執を一気に埋める。心のロード・ムービーた゛。

ぜひ御覧下さい!いい映画ですよ。

DVDはレンタル開始。

ウェイン・ワン。[スモーク][ブルー・イン・ザ・フェイス]等。