[髪結いの亭主] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

力道の映画ブログ&小説・シナリオ

映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

力道のブログ-is.jpg

  パトリス・ルコント監督・脚本。クロード・クロック脚本。エドゥアルド・セラ撮影。マイケル・ナイマン音楽。90、フランス映画。

 苦手だったルコントなのですが、[仕立て屋]を克服出来たので、次は本作(笑)。

 驚かされるのは、ラストのアントワーヌの喪失感の表現。エキゾチックな音楽をかけて自己流の踊りを客と意気投合して踊った後、セラのカメラは二人を俯瞰で写していく。この間が絶妙で、観る側に深い余韻を残し、ルコントのテクニックを感じさせる。

 ドーウ゛ィルの海岸沿いの家に生まれた12歳のアントワーヌ(ヘンリー・ホッキング)髪結いの亭主になると心に決めている。 近所の床屋のシェーファー夫人(アンリ=マリービザニ)体臭と顔にあたる乳房の感覚が、彼に固い決意をさせるが、それを聞いた父親(ロラン・バルタン)に張り倒されてしまう。
 10数年後、成長したアントワーヌ(ジャン・ロシュフォール)は、同性愛者のインドールの店で働く理髪士マチルド(アンナ・ガリエナ)に惹かれ、彼女が店を譲り受けたあと、散髪の際に求婚の言葉を投げ掛ける。
 最初は聞かないふりをして外に出されるアントワーヌ。彼女の真意を計りかね[強く念じれば必ず願いは叶う]という父親の教えを信じて念じると三週後、マチルドは彼を受け入れ、二人は結婚した。

様々な客が訪れ、幸福な日々が流れるが、ある大雨の日に……。


アントワーヌの極端な匂いや乳房への憧憬を見ていると愛情そのものに対する渇望に思えてならない。
念願の願いがかなった後、アラブ音楽をかけながら幸福を傍受する日常の切り取りが巧み。仕事も友人も子供もいらないというマチルドへの純愛ぶりが眩しいほどに描かれる。
だから、この後に来る突然の悲劇が極限の対比となって浮き彫りになるのだ。
この結末は観る側にも深い衝撃を残していく。その効果を最大に生かしたルコントの構成力の上手さに舌を巻く。これも秀作だ。
DVDはレンタルにあり。

パトリス・ルコント。[仕立て屋の恋][ダンデアム]等。