[アニエスの浜辺] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  アニエス・ウ゛ェルダ監督・脚本。エレーヌ・ルウ゛ァール、アーレン・ネルソン撮影。ジョアンナ・ブルゾウ゛ィッチ、ステファン・ウ゛ィラール音楽。08、フランス映画。

  09年10月に岩波ホールで公開された80歳になる映像作家アニエス・ウ゛ェルダが自らの人生を綴るドキュメンタリー。パープルさんCecileさん皆様お薦め作品。
  僕も代表作は全て紹介してきたが。フランス・ヌーベルバーグを代表する映画監督であり、ジャック・ドゥミ監督の夫人としても有名。

 さすがに映像作家であり、芸術家である彼女だけに、ただのドキュメンタリーに終わっていない。
心象風景は浜辺だと語り、自分の生まれたベルギーの浜辺に無数の額入りの鏡をキャンパスのように立てる。作品内で本人が語る[恋人たち]で有名なシュルレアリズムの画家マグリットを思わせる映像に驚かされる。
 幼少期を役者達に再現させ。それに合わせて、実際の写真をコラージュしていく技法は、彼女の映像作家としての卓越したセンスを感じさせる。
 戦争中、南仏のセートでの船上生活からパリへ、写真学校から写真家として、文化大革命、キューバにおけるカストロの革命を体験。激動の時代を実際に見てきたことが彼女の作家として大きな影響を与えたことがわかる。
 シネマ・テークでのヌーベル・バーグの映画監督達との出会い。特に夫になるジャック・ドゥミとの結婚と島での暮らしぶり。
  [5時から7時までのクレオ]や[幸福][歌う女歌わない女]等の制作秘話。ドキュメンタリーも再現映像とインタビュー、自身のユーモア溢れる語りで回想していく。

  ドゥミがハリウッドに招かれ、西海岸における生活を回顧。68年、平和、女性解放、ベトナムへの派兵反対等。いつも時代の変革の中心にいた作家としての先鋭性が浮き彫りにされる。

 後半は愛する夫、ジャック・ドゥミに注いだ愛情。彼をエイズで亡くした後、息子、娘、沢山の孫達に囲まれ、家族とは小さな世界なのだという境地に至るまで、実に味わい深い作品に仕上がっている。
オマケの映像も大変に微笑ましく注目。
登場するのは、ジェーン・バーキン、ジャック・ドゥミ、ジャン・リュック・ゴダール、アラン・レネ等、フランス映画の黄金期を飾るメンバー。観ているだけで楽しい。そして、何よりウ゛ェルダの映画を観てみたいと思わせる一作だ。

DVDはレンタル開始。

アニエス・ウ゛ェルダ。[5時から7時までのクレオ][幸福]等。