⇒前回の話
翔子の正体は警察官だった。
結婚詐欺の容疑でクス男を追っていたのだという。
「クス男さんは真犯人が誰か気づいていた。その結果、真犯人に殺害されたのだと思う」
「そんな・・・」
翔子の推理にM田は絶句する。
「現場を調べて、いくつかわかったことがあるの。まず、クス男さんはトイレのハイタンクに薬剤が仕込まれていたわ。トイレを流すためのヒモを引っ張ると、有毒ガスが発生する仕組みになっていた。あと、ドアのカギも細工された形跡があったわ。おそらく、有毒ガスが発生した際、外に出られなかったんだと思う」
「そんな細工、一体だれがどうやって仕掛けたんだ!?」
驚きの声を上げる加山。
「細工自体は単純なので、30分もあれば誰でも仕掛けられると思うわ」
M田はハッとした顔になった。
「今朝、クス男さんはハブさんの部屋を調べていました。その間にクス男さんの部屋に誰かが仕掛けたのかもしれないですね」
翔子がうなずく。
「ええ、私もそう思うわ。あと、私はハブさんの部屋で不審な点を見つけたの。ベッドの下を見たところ、引きずられた形跡があったのよ」
「引きずられた形跡?」
「ハブさん、床に倒れていたでしょ。犯人は一度ハブさんの遺体をベッドに隠して、後になって引きずり出したようなのよ」
「えっ!?何のために」
「一度、ハブさんの遺体を隠しておく必要があったのよ。犯人は貴子さんとハブさんの無理心中に見せかけたかった。実際、二人は別々に殺害された。おそらく、ハブさんを殺害した後にベッドの下に隠して、貴子さんをハブの部屋におびき寄せて殺害したのだと思う」
M田は頭が混乱した。
ハブを殺したのは貴子ではなかった。
それなら、なぜ貴子は殺されてしまったのだろう。
ハブやクス男は人から恨まれやすそうだが、
貴子が殺される理由がわからない。
「とにかく、はっきりしていることは、犯人はこの中にいるってことね」
翔子が言い放つ。
M田はその言葉に圧倒された。
今、この場にいるのは
翔子、M田、加山、和歌子、ちか子の5人。
自分と翔子を除けば、3人しかいない。
いや、ちか子さんは絶対に違う!
・・・だが、先ほどの豹変したちか子の声が脳内にリフレインする。
実はちか子さんは多重人格者で、他の人格が犯行に及んだとか?
M田の妄想はエスカレートしていった。
⇒続き