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前回の話

 

翔子は断言した。

 

「犯人はこの中にいる!」

 

M田はまず加山が犯人の可能性を考えた。

 

加山は当初から翔子を怪しいと言っていた。

もしかして、自分に疑いが向けられないための作戦だったのでは?

 

次に、和歌子。

和歌子は妹の貴子を亡くして意気消沈している。

事件後は、特に怪しい行動をしていない。

 

そして、ちか子。

 

純真無垢なちか子さんが、殺人を犯すなんて絶対にありえない!

しかし、M田は先ほどちか子と莉多子のやりとりを聞いてしまった。

 

あの気性の荒そうな女の声は一体・・・。

 

もしかして、ちか子さんは多重人格者で、

ちか子さんの中に40代くらいの中年女性が潜んでいるのではないか。

 

今までもちか子に会った際に、

20代とは思えない大人っぽい印象を受けたことがあった。

ちか子さんの他の人格が一瞬、表に出ていたのではないか?

 

ちか子さんの別人格は殺人鬼の中年女性。

想像するだけでとても恐ろしくなったが、それでもちか子さんを心から愛していることには変わらない!

 

いや、まだちか子さんが真犯人と決まったわけではない。

実は加山かもしれないし、翔子は自分を警察官だと名乗っているだけで、まだ何の確証もないのだ。

やっぱり翔子が犯人かもしれない。

 

一同シーンと静まり返り、ピリピリしたムードが感じ取れた。

 

他のみんなも、誰の犯行なのか一生懸命推理しているに違いない。

ただ一人、真犯人以外は。

 

ダメだ。

怪しい人物が浮かんでも、証拠がない・・・。

 

その時!

 

フッと人影が現れた。

 

「莉多子さん!」

 

M田は思わず叫んだ。

 

「意識が戻ったんですね!お体、大丈夫ですか?」

 

「ええ。心配かけてごめんなさい。植木鉢を避けた拍子につまずいて転んで、ちょっと頭を打ってしまったみたい。今もちょっと頭痛がするけど、大丈夫そうよ」

 

「よかった!」

 

ホッと胸をなでおろすM田。

 

「私、今夜みなさんにお伝えしようと思っていたことがあるの。それはリカティの正体のことよ」

 

「リカティの正体!?」

 

「ええ。昨日、リカティを目撃した人が何人かいたでしょ?」

 

「はい。私と加山さんは同時に目撃しました」

 

M田がそう答えると、加山もうなずく。

 

「私もチラッと見たわ」と、翔子。

 

「あなたたちが昨日みたリカティ、これじゃないかしら?」

 

莉多子はスマホに表示された画像をみんなに見せた。

 

 

「あっ、そうです!」

 

M田と加山は興奮して叫んだ。

 

「確かにこの姿だったわ」と翔子もうなずく。

 

「やっぱりね・・・。あなたたちが目撃したリカティはね、本物のリカティではないの。リカティの格好をした人間だったのよ」

 

「えっ!?」

 

「厳密に言うと『UMA2の刃』というアニメに出てくるリカティの格好ね。私はそのアニメを観ていないので知らなかったのだけど」

 

「アニメのリカティ?」

 

キョトンとした顔になるM田。

 

「ええ。アニメに出てくるリカティの格好を忠実に再現していたのよ」

 

「そういえば、クス男は『UMA2の刃』が好きだったわ・・・」

 

翔子がポツリとつぶやく。

 

「昨日の休憩時間、UMA2のリカティのコスプレで撮影が行われていたのよ。目的は年賀状用の写真を撮るために。このリカティの正体は和歌子さんよね? 和歌子さん、アニメキャラのコスプレが得意だったわよね?」

 

莉多子が和歌子に問いかけた。

 

リカティの正体は和歌子!?

 

一同の視線が和歌子に集まった。