家に着いた和也は 無言で玄関のドアを開けた。

 

『おかえりなさい。和也。』

 

『…。』

 

迎えた母と目を合わさずに、黙ったまま2階の自分の部屋へ駆けあがる。

 

 

いつの頃からか 母は、開業医である父の跡を和也に継がせるため 過度な干渉をするようになっていた。

 

毎日の塾、帰宅後の勉強、遊びの牽制…

 

野球をしたいと言った時も、成績が下がることを理由に大反対された。雅紀達とゲーセンへ行った時もそうだった。帰宅した自分と友達(雅紀含む)の前であからさまに嫌な顔をして見せたのだ。

 

忙しい父とは まともに顔も合わせていない。

 

――そっちがそうなら、こっちにも考えある。成績さえ維持すればいいんだろう。その代わりもう何も言わせない。

どうせ 大人は 子供の大切なモノなんて分かってくれないんだから。

 

 

和也は野球部に入り、部活に打ち込んだ。

そして友達との付き合いを楽しむその裏で 必死に勉強し、トップの成績を維持してみせた。

 

その上で 両親との関係を断絶した。

 

 

それもこれも雅紀との時間を大切にしたかったからだ。

だけどその雅紀は自分より大切な存在を見つけてしまった。

 

今までの努力が全くの無駄になったように感じた。

思えばそのために犠牲にしたものが多すぎたように思う。

 

 

時計は夜の9時を回った。

父親はまだ帰っていないようだ。

 

 

 
 

 

 

 

和也はベッドに寝ころびスマホを開いた。

 

雅紀からのLINEには 夕焼け空の画像が貼られ

 

いつもの夕焼けが めちゃくちゃキレイに見えるグリーンハーツ

 

そんな浮かれ文句が 添えられていた。

 

それを既読スルーし、メールのアイコンをタップした。

 

 

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拝啓 智さま

 

先程は大変失礼なメールを送りつけてしまいお詫び申し上げます。

 

どうして僕の名前が分かったんですか?

 

 

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送信。

返信はすぐに来た。

 

 

 

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>どうして僕の名前が分かったんですか?

 

え? だって きみのメアドに kazunari って入ってるから。クローバー

カズナリくんで合ってた?

それにしても真面目なんだね。クローバー

拝啓…なんて文字見たの 何年ぶりだろう(笑)

 

 

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自分より 少し年上のように感じた。

誰にも言えなかったことが、誰かも知れない人だったからこそ言える気がした。

 

 

 

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突然すみません。

智さんは、自分の親をウザいと思ったことがありますか?

僕はあります。

僕の両親は 僕の意思を無視して自分の跡を継がせるために勉強を強いてきます。

子供には子供の世界があって、その時にしかできない大切なことがあるし想いもあります。

それを無視して理解もしようとせず、自分たちの言いなりにしようとすることに我慢ができません。

チャラチャラした身なりだけで 僕の友人たちに 不良とレッテルを貼り、成績の良し悪しだけで人を判断するところが大嫌いです。

 

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ちょっとだけ迷って送信した。

 

――迷惑だったかな? でもどこの誰か知らない子供の戯言なんて迷惑なら無視するよな。。。

 

 

 

ブブッスマホ笑い

 

 

――お!返事来た!?

 

 

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そうだね。親は子供の気持ちを100%汲めないかもしれないね。でもそれは カズナリくんも同じじゃない?

親の気持ちだけじゃないよ? 友達のこともそうだし、なんなら自分のことだって分かってないかもしれないよ。クローバー

 

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つづく。

 

 

 

 

にのちゃんに甘える大野くんに会いたい。

(大野くんを甘やかす にのちゃんでも可 (`・ω・´)ゞ )