「 平野は、将来の夢とかあるの? 」
僕は黒板に書いている文字をノートに写しながら朱里に聞いてみた。
「 うん、私は幼稚園の先生になりないの 」
「 へぇ、何か平野らしいね 」
僕は小さく笑いながら言った。
朱里は、どこか恥ずかしそうな顔をしていた。
「 そうかな、そう言ってくれたの、岡崎君が初めてだよ 」
「 そうなの?でも、平野って優しいしさ、幼稚園の先生とか似合ってるよ 」
本当に、僕はそう思っていた。朱里のような優しい子なら、先生に向いていると。
「 ありがと、そんなに言ってくれるなら、私頑張らないとな~ 」
優しく微笑む朱里の顔を見ながら、僕は笑った。
すると、授業終了のチャイムが校内に鳴り響いた。
「 では、今日はここまで。ちゃんと復習しておくように 」
そう言うと、先生は教室から出て行った。
「 あ、お喋りに夢中でノート書いてないや 」
朱里は何も書かれていない自分のノートを見ながらそう言った。
「 なんなら、見る?一応全部書いてあるけど 」
僕は鞄にしまいかけたノートを朱里に渡した。
すると朱里は、僕のノートの名前の部分をじっと見つめる。
「 どうかしか? 」
「 下の名前、勇輝って言うの? 」
朱里は僕にそう聞いてきた。
「 あれ、教えてなかったっけ 」
「 うん、初めて知ったよ 」
そういえば、そうだったかもしれない。
朱里が転校してきたばかりの時は、こんなに話せる仲じゃなかった。
でも、いつの間にかこんなに仲が良くなって、でも自分の名前を教えた事はなかった。
「 ねぇ、岡崎君 」
「 え、何? 」
朱里は少し顔を赤くしながら言った。
「 あの・・・、よかったら勇輝君って、呼んでも、良いかな・・・ 」
そう言われた時、僕も朱里と同じ様に、顔が赤くなった。
「 その・・・、私の事も、朱里って呼んで良いから 」
「 うん・・・、良いよ 」
僕は真っ赤な顔でそう言った。すると、朱里も嬉しそうな顔をしてくれた。
教室は他の生徒達が騒いでいて、きっとうるさかっただろう。
でも、僕の耳には、そんな他の声は入ってきてはいなかった。
きっと、朱里にも、ただ、僕達二人だけの声しか。
続く