Shudder Log -15ページ目

Shudder Log

* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

奥様の名前はフンミン。
そして、旦那様の名前はスヒョン。
ごく普通のふたりは、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。
でも、ただひとつ違っていたのは、奥様は魔女だったのです……!
 
一人息子のDHはもちろん魔法が使える。
SHはHMが魔法を使うことを嫌がるのは疎外感があるからか。
自分にコントロールできないことが嫌なのか。
じゃなきゃ「'普通'じゃないことが嫌」という気持ちと「人の目を気にするな」という気持ちの間で悩んだりしたらいい。
チェーホフの三人姉妹をミュージカル化してほしい。暗いけど。
イリーナを争って決闘するELのトゥーゼンバフとHMのソリョーヌイとか。
本当は男爵はELみたいに顔がいいのはダメなんだけど、HMの大尉が見たいので。
あとSHのヴェルシーニンが見たい。
KEのマーシャで。
イリーナはKSかな。
DHはオーリガっぽいけどナターシャをやらせたい。
JSはチェブトイキンで、イリーナをニヤニヤ見てたらいいと思う。
クルイギンにKBをどうかな。
それでオーリガにXAで。
アンドレイ役がいないね。

ユルが病んでも破壊衝動が外ではなく内に向かうように思えるのはKSだからだろうね。
シンが俺様というよりヘタレツンデレなのは原作ドラマ共通みたいだけど。
黒ユルを見ては心を痛めるんだろうかね。
それをむしろ楽しんじゃうようなキャラではないよね。
 
 
 ***
 
公務の帰りに、学校の近くを車で通ることになった。
それはもちろん偶然で、でももしかしたら、という気持ちが無かったといえば嘘になる。
目を凝らした窓の外にその姿を見つけて、俺はすぐに言った。
 
「止めてくれ」
 
車は静かに路肩に停車し、俺は息を整えてから窓を開けた。
 
「義誠君」
 
声をかけると、ユルは少し驚いた顔をした。
 
「シナ?」
 
ドアを開けて、座席の左に寄る。
 
「乗ってけよ」
 
ユルは笑顔になって、俺の隣に乗り込んだ。
 
「ありがとう」
 
ドアが閉まると、車はまた走り出す。
コン内官に知れたら、眉を寄せられるかもしれない。
 
「公務だったの? お疲れさま」
「ああ。お前は?」
「例のチャリティーイベントの準備」
 
俺自身、何度も参加できないかと誘われているイベント。
ユルは大々的に協力して、その間はチェギョンの傍にいられる。
 
「一人で?」
「遅くなると思ったから、先に帰ってもらったんだ」
 
その横顔は、幸せそのものに見えて。
 
「シンも来れたらいいのにね」
 
その言葉は、けれど真実ではなくて。
 
「忙しいんだよ。お前と違って」
「そうだね」
 
困ったような笑顔には、きっと安堵を隠してる。
一緒に居たっていい。
今は、まだ。
いずれは離れることになる。
俺の心はもうおかしくなってしまっていて、ユルの笑顔では幸せになれない。
それがチェギョンの隣にある限り。
俺以外の誰かに見せ続ける限りは。
 
ため息を飲み込むと、肩に何かがぶつかった。
横には、疲れて寝息を立て始めた大君がいた。
 
「……ユラ」
 
誰にも聞こえないように、小さく名前を呼んでみる。
ユルが起きそうにないことが分かって、俺はその頭に、自分の頬を預けた。

シン→ユル→チェギョンで。
コン内官はそれを感じ取っていたとか。
ユラって呼びたいのに呼べないでウジウジしたらいいんだ。

ベッドにうつ伏せになってスマホを眺めていた。
 
「どうしたの?」
 
顔をあげると、フンが首を傾げていた。
 
「何が?」
 
聞き返すと、丸い目をぱちくりとさせる。
 
「何もないならいいけど」
 
よく意味が分からなくて、周りを見回してみたけど、特に変化はない。
 
「何もないけど?」
 
僕が言うと、フンは笑顔になった。
 
「ならいいんだ」
 
フンは僕の隣に横になって、手の中を覗き込む。
 
「ツイッター見てたんだ」
 
画面が見えやすいようにスマホを傾けた。
 
「今日の感想とか書いてくれてるよ」
 
いくつかのツイートを目で追って、フンは言った。
 
「ケビンも何か書いた?」
 
僕は首を振って答える。
 
「ううん」
 
書かないの、と聞かれる前に、僕は続けた。
 
「あ、でも隣の二人が書いてた」
 
画面をスクロールして、そのツイートを見つける。
 
「ほら、セルカも」
 
僕からスマホを受け取って、フンは驚いたように笑みを消した。
 
「これって」
 
代わりに僕は笑ってしまう。
 
「ジェソプがキソプのまねしてるんだ」
 
黙ったままのフンに、僕は頬杖をついて言う。
 
「Seopnight、なんてキャラじゃないのにね」
 
フンは僕を見て、やっと笑った。
 
「わかった」
 
今度は僕が首を傾げる番だった。
 
「何が?」
 
フンはスマホを僕の手に戻す。
 
「さっきケビンが変な顔してた理由」
 
僕のまねをするように、フンは頬杖をついた。
 
「変な顔なんてしてないよ」
 
言い返した僕に、フンは即答する。
 
「してたよ」
 
僕はまだ意味が分からなくて、フンが続けるのを待つ。
 
「ケビンって意外と」
 
フンは言葉を止めて、楽しそうに目を細めた。
 
「意外と、何?」
 
聞き返すと、フンは言った。
 
「妬くよね」
 
僕は腕の下にあった枕を取って、フンの顔に投げつけた。

「大丈夫だと息子に言ってやれよ、シン・スヒョン。嘘をつくんだ、俺がケビンにそうしたように」
 
ELがトゥーフェイス、KEがレイチェルで。
SHはゴードンで、その妻子がHMとDH。
JSはジョーカー、KSはスケアクロウ。
ブルースとアルフレッドはKBとXAで。
セルカを撮れと、キソプが言うから、撮ったのに。
 
「どうして同じように撮ってるのに」
 
写真を見て、その出来に顔をしかめる。
 
「うるせー」
 
投げた枕は、キソプの頭の上を飛んで床に落ちる。
 
「まあ、いいけどね」
 
投げ出した腕に頭を乗せて、キソプは微笑む。
 
「なんだよ」
 
声が尖らないように俺は尋ねる。
 
「写真、好きじゃないもんね」
 
細めた目は楽しげだ。
 
「そんなことないよ」
 
俺が言うと、キソプは笑いを零す。
 
「そう?」
 
返した声は、尖ってしまった。
 
「そうだよ」
 
キソプは微笑んだまま、手中のスマホに視線を落とす。
 
「わかった」
 
大して感情も込めずに言って、何度かページを遷移させ、ふと指を止めた。
 
「あ、フンミン」
 
キソプが画面をこちらに向ける。
 
「ほら」
 
覗き込めば、同じような言葉と、フンの顔があった。
 
「俺よりも出来がいいって言いたいのか?」
 
思わず顔をしかめると、キソプは答えずに真剣な顔をした。
 
「ジェソプ、明日も撮りなよね」
 
俺はキソプを睨んで、低い声で言う。
 
「絶対に撮らない」
 
言われた方はまったく気にかけない様子で、また軽やかに笑った。
JJがYCと仲良くなったのも、
HCがKBを可愛がったのも、
HGが親しかったのがJJとHCだったのも。
 
というところからのYoochul。
 
 
 ***
 
ヒチョル兄は怪訝そうな声で言った。
 
『オレ、ジェジュンにかけたんだけど』
「ジェジュン兄は今シャワーを浴びてます」
 
微かに水音がしているが、ヒョンはもちろん聞こえないだろう。
 
『どこにいるんだ?』
「ジェジュン兄の部屋です。昨日飲んでて、そのまま泊まったんですよ」
『ふーん』
 
そのまま黙り込んだヒョンに、俺は言う。
 
「出てきたらかけなおすように伝えます」
 
電話の向こうから、返事は聞こえない。
 
「もしもし、ヒチョル兄?」
『たまには連絡して来いよ、お前も』
 
遮るように発せられた言葉に、俺は咄嗟に謝罪を返す。
 
「スイマセン」
 
元々、すごく仲がいいというわけじゃない。
ジェジュン兄とヒチョル兄が連絡を取り合っているのは知っていたし、タイミングよく顔を合わせることもあったけど。
周囲はどうあれ、気にかけてくれていることも。
知っては、いた。
 
「じゃあ今度、飲みに連れて行ってくださいよ」
 
努めて軽く口に出してみる。
ヒチョル兄が何かを言おうと息を吸う音が聞こえて、けれど聞こえてきたのはジェジュン兄の声だった。
 
「ユチョン? 電話?」
 
シャワーを浴び終えたジェジュン兄は、頭にタオルを乗せたまま裸足でリビングへ入ってきた。
 
「出てきました。今、かわります」
 
ヒチョル兄に声をかけてから、スマホをジェジュン兄に差し出す。
 
「ヒチョル兄から」
「ヒチョル兄?」
 
ジェジュン兄は聞き返しながら、受け取ったスマホを耳に当てた。
 
「もしもし、ジェジュンです。え? ええ、そう、おれの部屋。あはは、違いますよ」
 
俺は立ち上がり、ジェジュン兄が出てきたばかりのバスルームへ向かった。
「君が僕を愛する限り、って違うよね」
 
ケビンは真剣な目で俺を見て言った。
 
「違うって何が?」
 
尋ねると、Backstreet Boysの歌を口ずさむ。
ボーイバンドではお馴染みのラブソング。
甘くてキレイな声。
 
「僕だったら、そんな条件つけない」
 
歌を止めて、ケビンは言う。
 
「条件?」
「だって、どこから来たとか何をしてきたか気にしないのは、愛してる間だけなんでしょ」
 
俺は歌の歌詞を思い出し、頷いた。
 
「愛してくれるなら、だから、まあ条件か」
「でしょ?」
 
ケビンは不満そうに口を尖らせる。
 
「別れた途端に過去のことを洗い浚い罵られるとか嫌じゃない」
 
その言葉に、俺は噴出す。
 
「なんだそれ」
 
頬を膨らませたままのケビンは、早口で呟く。
 
「もしイライが、僕のことを愛してくれなくても、何をしてきたとかそんなこと気にしないのに」
 
名前を出されて、俺は姿勢を整えた。
 
「俺だって言わない」
 
振り向いたケビンの顔を覗き込む。
 
「たとえケビンが俺を嫌いになったとしても、過ぎたことをあげつらって罵倒したりはしないよ」
 
真面目に言ったが、お気に召さなかったらしい。
 
「当たり前だよ」
 
じゃあ何て言ったら、機嫌が直るのか。
俺は頭をかいて、少し考える。
 
「じゃあ、こういうのはどう?」
 
微動だにしないケビンの視線に、少し照れてしまう。
 
 俺は君のプラチナになろう。
 君の銀になって、金になろう。
 たとえ君が僕を愛さなくても。
 
カナダのジャスティンが歌う同じタイトルの曲の、歌詞を少し変えて歌ってみる。
ケビンの歌声には、まったく敵わないけど。
 
「気に入った」
「だろ?」
 
やっと笑顔の戻ったケビンを抱きしめた俺の額に、天使は祝福のキスを授けた。

日本での宿舎も含めて、同じ部屋になることはまずない。
それは寝起きの時間に差があるからと、部屋の汚さへの耐性が違うからだ。
よく寝るのは自分の方で、だから、あまり朝に声を聞いた覚えがない。
眠くてあまり話さないし、目が覚めきっていないから忘れてしまう。
まあ、夢心地でフンの声を聞くのも悪くないけど。
 
 *
 
目を開く前に、スマートフォンが鳴った。
それはメールではなく着信を告げる音だった。
俺は半分眠ったまま手を伸ばし、スマホを探り当てる。
画面は見ずにタップして、耳に当てた。
 
「もしもし」
『おはよう!』
「え、フンミン?」
『そうだよ。よく寝た?』
 
意外な声に、俺は夢うつつのまま答える。
 
「よく寝た。むしろまだ寝てた」
 
再び枕元を探り、今度は時計を手繰り寄せて時間を見る。
目覚まし時計がなる時間の、ちょうど5分前。
 
『だろうね。声で分かった』
 
早起きなフンの寝起きの声を聞く機会は多くない。
反面、フンはしょっちゅう俺の寝起きを見てきている。
 
『今日はちゃんと起きてね。大事な日でしょう』
「起きたよ」
 
フンのおかげで。
日本とは時差がないから、連絡はしやすいと思っていた。
とはいえ、朝にこうして話すなんて思わなかった。
 
『僕も稽古頑張るから』
「見に行くよ」
『うん、ありがとう』
 
目を擦りながら、俺は尋ねようか迷う。
モーニングコールなんて、珍しいな。
それに、どうしてこの時間に起きることが分かったんだろう。
偶然だとしたら、大した相性だ。
 
「一緒にいるときも、朝はあまり話さないのに。変な感じ」
『それはスヒョン兄が寝てるから』
「そうだけど」
 
呆れたような楽しんでいるような声。
ああ、失敗した。
二時間早いジャカルタからなら、俺だってこういうことができたのに。
ため息を吐きそうになったところで、時計が鳴った。
 
『もう起きる時間だね』
 
電話を切る準備はできた、と声色が告げる。
 
「また時間が空いたら連絡する」
『うん、分かった』
 
俺は一息置いてから、声に出す。
 
「愛してる」
『僕もだよ』
 
その返事を聞いてから電話を切り、俺は起き上がってベッドから下りた。
 
 *
 
部屋を出ると、珍しく朝から機嫌のいいケビンがいた。
 
「おはよう。何かあったのか?」
 
ケビンは手にしていたスマホの画面を俺に向ける。
セルカのついた、キソプからのメッセージ。
 
「昨日、何時に起きるかなんて聞いてきたから、怪しいなとは思ってたんだけど」
 
そう言って、ケビンは微笑む。
俺はサプライズを仕掛けた犯人を知って、ケビンにつられるように笑った。