「君が僕を愛する限り、って違うよね」
ケビンは真剣な目で俺を見て言った。
「違うって何が?」
尋ねると、Backstreet Boysの歌を口ずさむ。
ボーイバンドではお馴染みのラブソング。
甘くてキレイな声。
「僕だったら、そんな条件つけない」
歌を止めて、ケビンは言う。
「条件?」
「だって、どこから来たとか何をしてきたか気にしないのは、愛してる間だけなんでしょ」
俺は歌の歌詞を思い出し、頷いた。
「愛してくれるなら、だから、まあ条件か」
「でしょ?」
ケビンは不満そうに口を尖らせる。
「別れた途端に過去のことを洗い浚い罵られるとか嫌じゃない」
その言葉に、俺は噴出す。
「なんだそれ」
頬を膨らませたままのケビンは、早口で呟く。
「もしイライが、僕のことを愛してくれなくても、何をしてきたとかそんなこと気にしないのに」
名前を出されて、俺は姿勢を整えた。
「俺だって言わない」
振り向いたケビンの顔を覗き込む。
「たとえケビンが俺を嫌いになったとしても、過ぎたことをあげつらって罵倒したりはしないよ」
真面目に言ったが、お気に召さなかったらしい。
「当たり前だよ」
じゃあ何て言ったら、機嫌が直るのか。
俺は頭をかいて、少し考える。
「じゃあ、こういうのはどう?」
微動だにしないケビンの視線に、少し照れてしまう。
俺は君のプラチナになろう。
君の銀になって、金になろう。
たとえ君が僕を愛さなくても。
カナダのジャスティンが歌う同じタイトルの曲の、歌詞を少し変えて歌ってみる。
ケビンの歌声には、まったく敵わないけど。
「気に入った」
「だろ?」
やっと笑顔の戻ったケビンを抱きしめた俺の額に、天使は祝福のキスを授けた。