11月22日(水)から公開の映画ナポレオン。週末に映画館 Pathé la Villette へ。

IMAX と言うパノラマのサロン。大人21€。14歳以下は13,50€。オリジナルの英語 + 字幕とフランス語吹替えと迷ったが、ナポレオンはフランス語で聞きたいと思い、吹替えを選択。観客は年齢を問わず、95%が男性客であった。全てを手に入れ、全てを無くしたナポレオンは、永遠に我々のヒーローであり、ロマンである。
およそ2時間半の上映。大好きなナポレオンの生涯が "ざくっ" と観られて満喫した時間を過ごせた。まぁ、"Wataloo"、"L'Otage de l'Europe"、"Marie WALEWSKA" 等々、人生一時のナポレオンを描いた作品が既に多数存在する訳で、彼の全生涯を映画にするなら、スターウォーズの様に1部2部3部...と分けなければとてもとても語りきれない。だから、ナポレオンファンの中には、何でこの部分をはしょったかなぁ、とか、何でこの人物が登場しないんだ?!等と思った人も居るかと思う。

まずは嬉しかった点から。公開前の評論で、衣装や舞台がかなり正確に再現されている、と聞いていたが、なるほど。特にフォンテンブロー城で見た、ナポレオンの地球儀が数秒スクリーンに映った際には感激した。(写真は自身のブログから)
マルメゾン城の床はブラック&ホワイトで、周りに小川が流れている。これも良い雰囲気をかもし出していた。
城の入口は現在こうなんだが、映画では城の近所にある temple d'amour に似た感じであった。実際に当時がどうであったのかは不明だが。


⬆️ temple d'amour
余談だが、エジプト遠征の際、ナポレオン軍がピラミッドに大砲を射つショッキングなシーンがある。が、これは真実を大袈裟に表現しただけで、実際のナポレオンはピラミッドの破壊はしていないらしい。

登場人物。歴史上の人物については、人それぞれ勝手なイメージがあると思うので、決して映画を批判する訳ではないが、ロベス ピエールは太り過ぎであった。私の中の彼は横山やすし氏の様な感じ。頭の回転が速く、神経質で服装にとても気を使っている。だから、感情移入しづらかった。
⬆️左がロベス ピエール。映画の中の彼は隣のダントンの様だった!

ジョゼフィンの娘、オータンスが大人に成長し、最後辺りに登場。ナポレオンに母ジョゼフィンの死を告げるが、青い眼に巻き毛の彼女はイメージとピッタリであった。

さて、ジョゼフィンはミステリアスで魅惑的な女性として描かれていたが、彼女は内面的にキャメロン ディアスの様な女性であったと私は思っている。天真爛漫で社交的、ダイナミックで誰からも好かれる感じ。マーティニック出身ならば尚更そうであろう。

ナポレオンは良い感じだが、40代くらいの俳優さんだろうか?Toulonでの戦いのナポレオンはまだ20代半ば(24歳)なので、映画の出だしはあまりしっくりこなかった。当初から白馬に乗っていたのも、どうかな?と思った。マレンゴはアフリカから連れてきた特別な馬だから、若かれし彼は、戦場向きの黒か茶系統の馬だったのでは?と思うが... 真相は不明。

フランス革命後、不安定な社会情勢が続き暴動を起こす国民に、ナポレオンが警告無しで大砲をぶっぱなすシーンがあるが、これは嘘だと私は思う。彼はロベスピエールの政策に不満を持っており、国民や囚人をギロチンにする事に反対していた。皇帝になった後もほぼ処刑は行っていない筈。そもそも国民に銃を向ける様な男は皇帝にはならないだろう。

特に残念だったのは、ナポレオンが客人の前でジョゼフィンに「なぜ妊娠しないんだ!今夜妊娠しないなら離婚だな!」と罵倒するシーン。そして、離婚手続きの際、間極まって口ごもる彼女に「読め!分かったか!」と軽くひっぱたくシーン。何でこんな脚本なんだ?!こんな男であったなら、離婚後も友人としては付き合えないであろう。

彼が赤ん坊のナポレオン2世を連れ、マルメゾン城を訪れたのには、驚きを通り越してひいてしまった。子供が産めない古女房に、後妻との間に出来た子供を見せに行くだろうか?ジョゼフィンは赤ちゃんを抱き「私が捧げた事の意味が、いつか貴方にも分かるかしら?」と静かに語りかける。まぁ、真相は不明。

"Napoléon and Joséphine" と言う素晴らしいシリーズがあり、こちらはナポレオンと彼を取り巻く人々との人間関係に重点を置いている様に思う。俳優さんと脚本が私のイメージとピッタリである!

後妻マリールイーズが、満面の笑みと全くアクセントのない流暢なフランス語でフォンテンヌブロー城にやってきたのも、ちょっと違うかな?と思った。彼女は政治理由で泣く泣く嫁いできたオーストリア皇女で、ナポレオン失脚後は子供を連れて、そそくさと祖国に帰ってしまうのに。

ナポレオンママは、賢さと内に秘めた強さがあり、これまたピッタリであった。

宣伝に "Légende" = 伝説、"Amant" = 愛人、とあったので、マリー ヴァレスカとナポレオン妹の友人辺りが登場するかな?と思ったが、ナポレオンママが準備した、一晩限りの女性が登場したのみ。

彼女は妊娠し、ナポレオンは自身の繁殖能力に自信を持つが、子供の認知をうやむやにする。この説は初耳である。おおよそは、マリー ヴァレスカの妊娠で機転が起きたと言われている。
個人的には、ポーランドの妻と呼ばれたマリー ヴァレスカ、ナポレオンの影と言われたデュロック、側近のベルトランドにも登場して欲しかった。

⬆️映画 Marie WALEWSKA。当時さほど人気が出なかったらしいが、私は好きだ。
⬆️ナポレオンの墓前に警備員の様に設置されたデュロックの墓。

この映画は、特に戦争に注目を当てて構成されている様に思った。Toulonの戦いから始まり、オーステリッツ、エジプト、ロシア遠征、そしてWataloo。馬に大砲が直撃し、ナポレオンが落馬するシーンや、氷が割れ、兵士達が真冬の水に落ちていくシーン、敵との接近戦など大変迫力のあるシーンが続いた。

⬆️予告編。

映画の最後に、ナポレオンの戦いや遠征で何人の犠牲者が出たのかが表示される。現在のウクライナやパレスティナでの戦争について考えずにはいられなかった。「人はいつになったら戦争の無意味さを学ぶのか?」と語ったこの曲が頭をよぎる。

最近、あちこちで見かけるナポレオン。